第666話
ひとまずステータスがわかったところで、細かいスキルを確認していくことにした。
アポカリプスの新スキルは〖カースナイト〗、〖リンボ〗、〖ディーテ〗、〖コキュートス〗、〖終末の音色〗だな。
何やら不吉なスキル名が多いように思うが、それも仕方のねぇことだろう。
オネイロスとは違って、直球で邪竜タイプなのは選ぶ前からわかってたことだ。
【通常スキル〖カースナイト〗】
【魔力の塊より、強い呪いを帯びた騎士を生み出す。】
【騎士は衝撃を受けるか、対象の敵への攻撃に成功した際に爆ぜ、周囲に呪いを撒き散らす。】
【飢餓や狂乱状態を与える他、相手の魔法力が低い場合には死を、場合によっては対象の肉体を術者が操ることもできる。】
なるほど……?
騎士を生み出すっつうか、当たると爆発する魔弾を放つ感じに近いんだろうか。
相手の耐性や魔法力によっては、追加で〖バーサーク〗や〖デス〗、〖支配者の魔眼〗のような状態異常も狙える……と。
状態異常魔法や〖デス〗は、どうせ効かねえだろって感じで使いどころが少ないことが多い。
攻撃手段と複数の状態異常を兼ねてるのは利便性の高いスキルだと言えるのかもしれねぇな。
もっとも……結局は速度重視になるだろうから、ノータイム攻撃の〖次元爪〗に勝るとは思えねえが。
それまで連発してた〖鎌鼬〗がほぼ死にスキルになるくらいには〖次元爪〗が便利すぎるんだよな。
多少当てたときのメリットが増えたとしても、結局は当てなきゃ意味がねぇわけだし。
オネイロスに充分攻撃力があったこともあって〖次元爪〗で間に合ってる感があったんだよな。
アポカリプスは、更に攻撃能力特化なわけだし。
正直、あんまり期待はできねぇな。
格下狩りにしても、わざわざ〖デス〗を使ったことはない。
〖鎌鼬〗で充分だからだ。
多分、〖カースナイト〗さんも同じ末路を辿ることになるだろう。
一応後で実験はしてみるつもりだが……。
【通常スキル〖リンボ〗】
【聖神教において、教神、及びそれに準ずる存在が、生きることも死ぬことも許されないものを救うために行使する魔法だとされている。】
【かつて一人だけ〖リンボ〗の習得に至った聖女が存在したという。】
【対象を時間や空間の概念の存在しない次元の狭間へと落とす魔法スキル。】
【射程は短く、発動も遅い。ただ、当たれば外敵を永劫に異次元へ閉じ込めることができる。】
お、おっかねぇ……。
オリジンマターの〖冥凍獄〗みてぇなスキルだ。
ただ、これを当てられる相手は普通に殴り殺せるって状態になっちまいそうだな。
〖ワームホール〗さんと同類の匂いがする。
工夫次第で当てられそうなら活躍の機会もありそうな気はするが……正直、文面から使うのにあんまり気乗りできねぇスキルだ。
【通常スキル〖ディーテ〗】
【地獄の炎を呼び出し、球状に留めて放つ魔法スキル。】
【地獄の炎は、対象を焼き尽くすまで決して消えはしない。】
これまた直球の攻撃スキルだな。
スフィア系に近そうだが、あれよりも威力が高いんだろうか?
この手のスキルの評価点は、消耗MP、威力、規模、速さ、といったところか。
気軽に撃てる〖次元爪〗、威力の〖グラビドン〗に比べて長所があるのかが気になるところだ。
ちょっと検証する必要があるな。
【通常スキル〖コキュートス〗】
【地獄の氷を呼び出し、自在に展開する魔法スキル。】
【万物を凍てつかせる氷は、決して溶けることがない。】
【周囲の熱を急速に奪うため、思わぬ被害が出ることもある。】
【一度展開した氷を消すことはほぼ不可能なので注意が必要。】
こっちは氷か……。
〖ディーテ〗よりは応用が効きそうなので、使いどころもあるかもしれない。
ただ、本命の攻撃以外に使うには、MP消費が激しそうなのがちょっと怖いところだが。
さて、と。
次のスキルが最後の新スキルだったな。
これが一番不穏なんだが……。
【通常スキル〖終末の音色〗】
【自身の生命力・魔力を溶かして膂力・速さへと変換する。】
【ただし、理性も溶かすため、狂乱状態へと陥る。】
【その激情は、視界に入るもの全てを無に帰すまで収まらない。】
【収まった後も、精神が変異する危険性が高い。】
【発動時には、身体から漏れ出た魔力の勢いで、奇妙な音が遠くまで響き渡る。】
【聖神教では、神の使いが楽器を用いて世界の終わりを告げるといわれており、この音はそれと同一視されている。】
身体能力の引き上げスキルなのはありがてぇんだが、デメリットがあまりに大きすぎる。
正直、これは無しだ。
絶対に使えない。
俺だって当然精神が変化するスキルには忌避感があるが、それ以上に激情の間に何をやらかすのかわかったもんじゃねぇ。
四大魔境ならいざ知らず、神の声のスピリット・サーヴァントとの衝突は恐らく人里近くになる。
そんときに何かやらかしちまったら償いようがねぇ。
第一、ちょっとステータスが上がることのメリットよりも、戦闘中に我武者羅に暴走するようになるデメリットの方が遥かに高い。
結局理性的な奴の方がずっと強いからだ。
策略家で陽動や騙し討ちに長けていたリリクシーラ。
ほぼ決まった動きしか取らないが、強みを活かせる状態でのみ勝負に出て、絶対に得意の持久戦に持ち込んでくるヘカトンケイル。
洗練された動きで攻めながら、勝ち筋を固めて必要とあれば守りにも徹するミーア。
連中が暴走して考えなしの攻勢に出続けてくれるのならば、俺はあそこまで苦戦することはなかっただろう。
結局のところ、多少ステータスが上がったところで、それを活かしきる動きができなければ、あまり意味はないのだ。
少なくともさっき挙げた三人はその領域にいた。
追い詰められても安易に手を出していいスキルじゃねぇ。
『主殿、難しそうな顔をしておられますが、どうなさいましたかな?』
トレントが心配げに俺へと尋ねる。
『ちっとスキルを確かめてたが、使い難そうなのが多くてな。移動するか。スキルのテストついでに、ある程度レベルも上げておきてぇ。時間がねぇから、最低限上げたらさっさと元の世界へ向かうつもりだがな』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます