第408話
現れた大柄の老人……三騎士の最後の一人であるローグハイルは、俺を見るなり、にんまりと笑った。
B+、B+であってくれ。
ここで、そこより上が出られると、かなり厳しい状況になる。
ただでさえ、こっちは後に魔王を控えているわ、聖女が動かないどころか聖竜さえ寄越さないわで、戦力不足が重大だ。
だが、神の声は、そんな俺の懇願をあっさりと甘えだと切り捨てる。
世の中、最悪を想定してちょうどいいというのは、どうにも本当のことらしい。
【〖ショゴス・ウーズ〗:A-ランクモンスター】
【知性が高く、戦闘能力にも優れており、また規模も大きい。非常に危険なスライム。】
【教神を名乗り、信仰を集めて邪教を造り出すこともある。】
【人前に出るときは人の形を装っていることが多いが、本来の姿を取ったとき、その恐ろしさのあまりに、周囲の者は正気を失うとされている。】
三騎士の一人が、A-ランク……。
想定は、していた。
していたが、実現してほしくなかったパターンだ。
俺としては、魔王がA-ランクあたりでいてほしかった。
最悪だ。
言動からして、サーマルの目的は、最初から最後の三騎士であるローグハイル、こと〖ショゴス・ウーズ〗と合流することだった。
それが、ギリギリで実現してしまった。
恐らくサーマルは、諦めて逃げるつもりで瓦礫の向こう側へと進み、その先でローグハイルと遭遇したのだ。
わざわざ姿を現したということは、当然、ここで俺達を仕留めておくつもりだ。
配下でA-って、そりゃあんまりすぎるだろ……。
俺の経験則から言えば、Bランクで十分、人間の軍団に匹敵するクラスだ。
いや、俺と違って経験値倍々のスキルもない。
ここまでランクを上げたら、その分レベルは疎かになっているはずだ。
それにスキル構成とステータスの偏り次第では、例え高ランクモンスターであろうが、どうとでもなる。
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〖ローグハイル・オーロルニア〗
種族:ショゴス・ウーズ
Lv :81/105
HP :1185/1185
MP :699/734
攻撃力:395
防御力:414
魔法力:739
素早さ:698
ランク:A-
特性スキル:
〖スライムボディ:Lv--〗〖グリシャ言語:Lv5〗〖HP自動回復:Lv7〗
〖MP自動回復:Lv6〗〖触手:Lv7〗〖忍び足:Lv7〗
〖気配感知:Lv7〗〖帯毒:Lv8〗〖消化液:Lv7〗
〖恐怖の魔眼:Lv7〗〖石化の魔眼:Lv7〗〖狂気の魔眼:Lv7〗
耐性スキル:
〖物理耐性:Lv5〗〖魔法耐性:Lv5〗〖毒耐性:Lv4〗
〖麻痺耐性:Lv6〗〖呪い耐性:Lv7〗〖混乱耐性:Lv4〗
〖睡魔耐性:Lv6〗〖石化耐性:Lv4〗
通常スキル:
〖変色:Lv7〗〖念話:Lv7〗〖ライフドレイン:Lv7〗
〖ハイケア:Lv5〗〖デス:Lv5〗〖組み付き:Lv6〗
〖ウーズボム:Lv7〗〖病魔の息:Lv6〗〖触手鞭:Lv5〗
〖クレイソード:Lv6〗〖カース:Lv8〗〖自己再生:Lv7〗
〖スキルクラッシュ:Lv5〗〖ワイドサモン:Lv7〗〖聖柱:Lv5〗
〖死神の雨:Lv4〗〖ウーズマシンガン:Lv3〗〖ドッペルゲンガー:Lv8〗
称号スキル:
〖王の分体:Lv--〗〖最終進化者:Lv--〗〖魔王の配下:Lv--〗
〖三騎士:Lv--〗〖司教:Lv--〗〖無限の剣:Lv--〗
〖醜き鬼の支配者:Lv--〗
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な、なんだよこの、とんでもぶっ壊れ性能は!
おまけに超高レベルじゃねぇか!?
持ってるスキルも、知らねぇ奴ばっかりだ。
おまけに、どうやら後から手に入れたらしいスキルは、不穏な匂いのするものばかりだ。
最悪に輪を掛けて最悪だった。
んだよこのステータスは。こいつが魔王でいいだろ。
ローグハイルに続き、瓦礫の隙間から毒々しい色の粘液が滲み出てきて、それらが重なり合い、先程逃走したサーマルが出現する。
「まったく、ローグハイル殿が遅いから、危うく城を放棄する羽目に陥るところだった」
「仕方あるまい。儂は、魔王様を想定外の事態から守る大役があるのでな。貴殿らがあまりに不甲斐ないので、出て来ざるを得なくなったが。魔王様から、切れる札は、すべて切れとの命令だ。なんとしても、ここで聖女を返り討ちにしておきたいらしい。……もっとも、儂から見るに、それだけではないようだが」
ローグハイルの視線が俺へと持ち上がる。
……サーマルがミリアを付け狙ってたことを考えても、魔王は俺を仕留めておきたいらしい。
「不敬ではないか、ローグハイル殿。魔王様の心中を探る様な言は」
サーマルの言葉に、ローグハイルは答えない。
サーマルは一時撤退かどうか悩んでいたし、俺もそうしてくれたらありがたいと思っていたが、どうやら魔王さんは、ここで完全に聖女との戦いと、俺との因縁を終わらせるつもりらしい。
裏を返せば、敵のボスが熱くなってる今がチャンスなのかもしれねぇが、どうにも楽観視できる状況だとは思えねぇ。
「……アレが、『イルシア』と『ミリア』だ。間違いない」
「ホホ、ドラゴンはともかく、なぜ魔王様があんな小娘を捕まえたがっているのかはわからぬが、まぁ、どうでもよいことだ。ミリアとやらの再確保と、露払いを頼んだぞ」
「ったく、このオレが雑魚狩りかよ」
二人が並び、俺の方を見やる。
〖ジョゴス・ウーズ〗こと、無限の剣ローグハイル。
〖ポイズン・ルーラ〗こと、絶死の剣サーマル。
あのスキル構成とステータス……俺とローグハイルがまともにぶつかれば、この場に居合わせるアロとナイトメア、ミリアは無事では済まない。
サーマルも、アロ達とミリアを狙うつもりだ。
なら、俺がローグハイルを相手取って、どうにかアロにはミリアを守って逃げてもらうしかねぇ。
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