第357話
俺はアロ達と共に大樹の根本、遺跡の入口へと降り立った。
石造りの巨大な扉の前で息を呑み、〖気配感知〗のスキルを巡らせる。
中からは、何かの気配を感じる。前回同様にアダム達だろう。
俺の脳裏に、あの首なし原住民と首だけ原住民の姿が頭を過ぎる。
俺が覚悟を決めていると、背後に魔物の気配を感じ取った。
とと、危ない。遺跡もヤベェが、この島自体も危険がいっぱいだからな。
それに進化でランクが上がったとはいえ、アロ達のレベルはまだまだ低レベル帯だ。
戦うごとに飛躍的にステータスが向上する。
この辺りで、もう一回くらいBクラス相応を倒しておくのも悪くねぇ。
俺が気配へと振り返ると、目立つショッキングピンクの淫竜ギーヴァが、やや離れたところで身体をくねくねとくねらせていた。
あいつ本当に懲りねぇな。前回容赦なくアロに突き落とされて死にかけたのを忘れたのだろうか。
ギーヴァは時折つぶらな黒い瞳で、チラチラとこちらを窺って来る。
何かをアピールしている様な動きだが、悪いけどマジでなんもそそられねぇからな!?
アロがじっと俺の方を見ていたので、俺は彼女に顔を向けてこくりと頷いた。
死なない程度に吹っ飛ばしてくれ。
「〖ゲール〗」
アロの翳した指先から現れた竜巻が砂嵐を巻き上げながらギーヴァへと突っ込んでいく。
途中で気が付いたギーヴァが慌てて体勢を立て直すが時すでに遅く、ギーヴァの身体が大きく跳ね上がり、遠くへと飛んでいった。
「クゥオオオオオンッ」
ギーヴァの哀し気な叫び声が響く。
なかなかの威力だ。
アロはレヴァナ・リッチに進化してから、魔法力の上昇値がかなり高い。
ギーヴァ相手でもまともにダメージが通っていそうだ。
まぁ、あいつはあのくらいじゃ死なないだろ。
追いかけて来られても面倒だ。とっとと遺跡に入るとしよう。
俺は頭を下げて、遺跡の扉を潜った。
内部に広がる大部屋へと足を踏み入れる。
天井の隙間から漏れてくる光を手掛かりに、辺りを観察する。
大部屋内に配置されている、人を象った天井を支える巨大な柱を視界の隅に入れる。
俺が歩みを止めたとき、奴らが姿を現した。
首のない全裸の筋肉の塊の様な男が二人。その間をぴょんぴょんと跳ねる、首から下が一本の図太い脚になっている一つ目の女の頭が一人。
前と同じだ。なるほど、ここは固定戦闘って奴らしいな。
奴らはこの遺跡の番をしている、と考えてもいいのかもしれない。
よう、また来てやったぜ。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
種族:アダム
状態:通常
Lv :60/100
HP :729/729
MP :374/374
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
種族:アダム
状態:通常
Lv :67/100
HP :785/785
MP :423/423
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
種族:イヴ
状態:通常
Lv :70/100
HP :476/476
MP :660/660
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
立ち塞がるは、A-クラス三体。
相変わらずグロテスクな姿だが、初見時に比べれば大分耐性も付いた。
それに俺には既に、アダムの行動パターンが概ね頭に入っている。
遺跡内部の天井が低いためここでは満足に〖飛行〗が使えないが、元々アダム相手では〖グラビドン〗の的である。
アダムも、ここでは〖ハイジャンプ〗のスキルを活かしてぴょんぴょん跳ね回ることはできまい。
前回はあの三体を前に夢中で逃げ出したが、今回はアロもナイトメアもトレントも、一段階進化している。
序盤からまともにダメージを取れるのはアロだけだが、ナイトメアもトリッキーな動きでこれまでの敵を翻弄してくれた功績がある。
格上を相手取るに当たり、素早さの遅れを糸で稼げるチャンスがあるのは大きい。
それにトレントさんも……トレントさん……えっと……うん。
ほら、応用次第で色々できる、〖グラビティ〗のスキルとかあるし……前は、俺達に撃ってくれたけど。
アダム三人組は俺を見るなり、表情を変えないままに走る速度を上げて突っ込んできた。
イヴがやや速度を落とし、アダム二体の後ろにつく。やはりイヴは体力が少ない分、無駄に突っ込んでくることは避けたいらしいな。
奴のスキル構成は……。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
種族:イヴ
状態:通常
Lv :70/100
HP :476/476
MP :660/660
攻撃力:360
防御力:411
魔法力:821
素早さ:711
ランク:A-
特性スキル:
〖MP自動回復:Lv5〗〖忍び足:Lv6〗
耐性スキル:
〖物理耐性:Lv3〗〖魔法耐性:Lv4〗〖毒耐性:Lv1〗
〖麻痺耐性:Lv4〗〖幻影耐性:Lv1〗〖即死耐性:Lv2〗
〖呪い耐性:Lv2〗〖混乱耐性:Lv3〗
通常スキル:
〖ワイドカース:Lv7〗〖デス:Lv7〗〖ハイレスト:Lv8〗
〖スリープラクド:Lv6〗〖ハイケア:Lv7〗
称号スキル:
〖最終進化者:Lv--〗〖最果ての民:Lv--〗
〖呪術師:Lv8〗〖執念:Lv9〗
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
予想通り、回復特化型か……。
魔法力が高いのは予想通りだが、素早さが化け物クラスだ。
俺の戦い方としては、イヴを真っ先に排除するのが無難だろう。
脳筋アダムとまともに殴り合っていて、回復まで自在にさせていたら、いくら俺でもさすがに厳しい。
しかしイヴさえいなければ、後は回復と打撃だけで押し切れなくもない相手だ。
アダムは俺とタイマンした個体よりもレベルが低い。それに、俺もあの頃から大分レベルが上がっている。
イヴ自体はHPが極端に低いため、上手くぶん殴れれば一撃で殺せるはずだ。
だが、イヴの素早さがアダムよりも更に速い。俺に一歩及ばないまでも、ほぼ同じ速度である。
アダムもイヴを守るように立ち回るだろう。
それに気を付けなければならないのは……攻撃力は低いが、あれでもアロ達を倒すには充分だということだ。
問題なのは、アダムがどの程度イヴのガードにつくのか……だ。
こちらもそれに合わせて動き方を変えねばならない。
考えられるパターンは三つある。
三位一体で行動するか、必ずアダムの片割れがイヴに付くようにするのか……それか、イヴが素早さを活かして逃げ回ることに期待し、アダム二体が全力で攻撃に打って出て来るか、だ。
固まってくれるのならありがたい。かなり相手の行動が制限される。
まずは相手の出方を窺うのに徹するとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます