第30話
ヒカリダケのお蔭で洞穴内が大分明るくなった。
採ってきて良かったわコレ。電球代わりにしよう。
ここ、日が落ちて暗くなってきたら何も見えなくなるもんな。やっぱ灯りは大事。
食事をするにも、暗がりだとまずく見えっし。
寝るときにはヒカリダケにグレーウルフの毛皮でも掛けて灯りを消そう。
穴を掘ってその中に枯れ木を入れ、〖ベビーブレス〗で火を付ける。
そしてその上に鍋代わりの壺甲羅を乗せた。
結構ボロボロだけど、川から汲んできた水が漏れなくて本当に良かったわ。
壺甲羅の中には白菜に似た植物グリンボール、その他採ってきたキノコ、ツボガメの肉、味付けとして塩代わりのヒトクイ花の根が入っている。
うんうん、これぞ鍋って感じじゃねぇか。懐かしくて涙が出そうだ。
箸も枝を爪で切ったり削ったりして作ってみた。
〖竜の鱗〗があるから多少の熱湯とか気にならんし、手掴みが下品とか直接狼に噛みついて食事を済ませることもある俺には小事なんだけど、雰囲気作りといいますか。
爪長いし指上手く動かせんしでクソ不便なんだけど、それでも俺は敢えて箸で挑みたい。
ぐつぐつと充分に煮込み、ツボガメの肉を口に運ぶ。
やだこれ美味しい。超うめぇ。
プルっプルの鶏肉みたい。前世でも喰ったことねぇぞこんなもん。
またツボガメ狩ろう。
今日は10匹分狩れてて本当によかった。
あのオオツボガメも回収できてたら膨大な量の肉が……いや、アレはいらないか。
アイツ、皮膚も半端なく堅かったな。こういうのは大抵、成長しきったら硬くてまずいもんか。
と……次は、この黄と黒の縞々のキノコを喰うか。
カミナリダケだったか?
麻痺毒あるけど味は美味なんだっけな。
うむ、うむ、ちょっとピリピリすっけど食感がいいな。しゃきしゃきというか。
ツボガメのダシもよく染み出ているようだ。
ちょっと舌先が痺れたり手の感覚がなくなったりしたけど、すぐ治った。
ドラゴンってすごい。
改めてそう思ったね。
【耐性スキル〖麻痺耐性:Lv1〗を得ました。】
うっし、儲けもん。
その後もひとつひとつ味わって食べ、具材を追加したり、グリンボールを入れて水の量を増やしたりと色々やっていたが、結局我慢できなくなって箸を噛み砕き、壺甲羅の端を掴んで持ち上げ、中身を口の中に流し込んだ。
ぷはー! 超美味かった!
満足満足。やっぱ豪快に喰うのが一番だわ。
俺、もう人間には戻れねぇな。
膨れた腹を撫でながら、ツボガメの味の余韻に浸る。
アイツら、壺甲羅あって本当に良かったな。なかったら多分、乱獲されて絶滅してるわ。
さてと……ツボガメはいいんだけど、余ったグレーウルフの山をどうするかだな。
腐らせるわけにもいかんし、適当に干し肉にしてみっか。
グレーウルフを解体し、臓物や骨、頭部を取り除き、肉と毛皮に分ける。
肉を手頃なサイズに切り、筋を除いて脂を落とす。
ヒトクイ花の根を〖ベビーブレス〗で燃やして灰塩を作り、肉に揉み込んでいく。
これで殺菌と同時に水分を抜けるはずだ。
グレーウルフの肉が多すぎて、これだけで塩がほとんどなくなっちまった。
肉を束ねて持ち、外に出る。
すぐ外に丁度いい木があったので、丁度いい高さの枝を〖ベビーブレス〗で殺菌と同時に邪魔な葉を取り除く。
そして枝に肉をぶっ刺していく。
いい感じなんでねコレ。
全部刺し終わるころにはハゲの木になっていたが。ごめんよ。
失敗したら……まぁ、次に活かそう。
量が量だからがっかり感が半端ないが。
【称号スキル〖コックさん〗のLvが1から2へと上がりました。】
お、やった。
さて毛皮……毛皮もこのままほっといたら腐るよな。
毛皮の加工なんて、ほんとにさっぱりわからんぞ。
とりあえず脂剥がして塩に埋めて殺菌と脱水しといたら、すぐに腐ることは避けられるか。
でもそっからどうしたらいいか、細かいことが何もわかんねぇからなぁ。
もう捨てちまった方がいいかな、これ。
絨毯とか服とか欲しいよなぁ。
いざ人化できたのに全裸とか、絶対嫌だし。
村行っても追い出されちまう。
とりあえず今日は毛皮から脂とか肉片取り除いて余った塩を擦り付け、ピペリスを外に出して乾燥させたら後はゆっくり休むとするか。
明日また本格的にヒトクイ花の根とピペリスを集めよう。
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