第170話 ヴィロナの嵐①
「ご
「アペリーロさん、ご無沙汰してます。あの時は、ありがとうね」
「はい、陛下のお役にたっていれば何よりです」
ヴィロナの城門まで、ヴェルディ家の三男アペリーロ・ヴェルディさんの
「そう言えば、お兄さんは元気?」
ヴィロナ公ガンバーリさんの事だ。
「それが、最近あまり良くないんですよね」
「えっ、病気?」
「いやっ、病気ってほどじゃないんですが……。まあ、
「そうなんだ」
「はい、何事も真面目にやり過ぎて、オーバーヒート気味なんですよ。もうちょっと
「頼らないの? 軍事面ではアペリーロさんに頼ってるんじゃ」
「まあ、それはそうですが、スプリッアー兄さんだって、兵を率いればやれるんです。俺の使い道は他にあるし、サンブールの奴だって……」
「なるほどね。
そう、僕の見た感じだと、スプリッアーさんは、武力だけでなく、人にも
で、アペリーロさんは、確かに
さらに、サンブールさんだけど、本人、
そして、ガンバーリさんは、何でもこなせるが、能力的に
すると、アペリーロさんは、驚いた顔をして、
「そうなんですよ。それをスプリッアー兄さんと、サンブールを組ませて戦いに行かせたり、外交にサンブールを行かせて、上手くいかなくて、余計に自分が働かなくちゃいけないって事になるんです」
なんか、サンブールさんの悪い事しか言ってないような気がするが。
「
「陛下は、特別なのでしょうが……。しかし、はい、兄にも
「そうだね~」
アペリーロさんと馬を寄せて、そんな事を話しながらヴィロナの街中を歩を進めていると。大声が
「お〜い! 陛下〜! アペリーロ〜!」
おっと遠くで、白の
すると、アペリーロさんは、馬を飛ばして、スプリッアーさんの所に行くと、スプリッアーさんを思いっきり
「痛て〜な〜」
「
「あっ、そうか。ごめん」
アペリーロさんは、
「陛下、すまね〜」
「馬鹿!
「いやっ、え〜と、陛下、ようこそお出で下さいました」
「スプリッアーさんも、わざわざお出迎えありがとう」
「いやっ、出迎えってわけじゃね〜……」
「オホン!」
「なくてありまして」
アペリーロさんが、
「そうなんだ〜」
僕も適当に返す。
そう言えば、皇帝直属軍は、さすがに、ヴィロナの街中に入ると大騒ぎになるので、城壁の外に
その宿泊場所なのだが、ガンバーリさんは、街の北の方に大きな防御機能もある石造りの城を建て、元々のヴィロナ公の宮殿をお客様用の宮殿として、使っているようだった。
宮殿の中は
「目が、痛くないね」
僕が、ランド王国の宮殿に比べての話をすると、
「ランド王は、セーラの結婚相手なんですよ」
エリスちゃんに、
宮殿に入り、しばらく休んでいると、ガンバーリさんがやってきて、
「ご無沙汰致しております、グルンハルト陛下。この
「ありがとう。ご無沙汰だね、ガンバーリさん。だけど、ガンバーリさんは、お疲れのようだね。アペリーロさんも言ってたけど、任せられる仕事は、任せた方が良いよ」
ガンバーリさんの目には、くまが出来。頬も
「はい、分かってはいるのですが、なかなか」
「もう、いっそ、しばらくアペリーロさんにでも、ヴィロナ公を任せて、しばらく休んでも良いんじゃない?」
「はあ、陛下が、そうおっしゃるのなら……。確かに、アペリーロの方が、ヴィロナ公にむいておりますしね」
もう、そういう意味じゃないんだけどね〜。まあ、確かに、アペリーロさんの方がむいているとは思うけど。
「まあ、悪くとらないで。休んでみても良いんじゃないって、だけだからさ〜」
「はい、
まあ、善処しますって、言われちゃうとね~。
「それで、陛下」
「うん」
「今日は、
「そう、楽しみにしているよ」
という感じだった。パーティーの料理なんだろうね~? 美味しいワインもあるかな?
そう言えば、サンブールさんは、挨拶、来なかったな~。
翌日、パーティーが行われた。マドリガーレというダリア
僕は、エリスちゃんや、マリーと共に、長い長方形のテーブルの一番の
僕達の近くには、ヴィロナ公ガンバーリさんを
僕達の後ろには、騎士物語を題材にしたタペストリーが
で、マドリガーレは、ダリア最初の多声歌曲。3つの詩句でできた詩節が、間にリフレインされる詩句を挟んで幾つか連なる。のだそうだ。良く分からないので說明のままだ。
ランド王国も凄いが、ヴィロナ公国の宮廷も見事なものだった。少し真似した方が良いだろうね。ちなみに、ヴィナール公国では、ランド王国の宮廷を真似しているようなので、僕はダリア風かな?
そして、料理だが、まずは、ゼニア共和国から直送された
続いて、ヴィロナ名物のコトレッタだった。前菜からコトレッタ? と思ったのだが、意外と仔牛はさっぱりとして、フォン・ド・ヴォーと赤ワインのソースでさっぱりと食べれたのだった。
そして、それに合わせるのは赤ワイン。
と、そんな時に、赤ワインを持って、ヴェルディ家の四男サンブールさんが、席を立って挨拶にやってきた。ガンバーリさんの
「陛下、ご無沙汰しております」
「うん、サンブールさんもご無沙汰だね」
「はい、有り難き御言葉」
全然、有り難くなさそうな口調だった。
「陛下、ヴィロナ公国の発展、見ていただけましたでしょうか?」
確かに、ヴィロナの街は、前回よりさらに活気に
「そうだね。活気に溢れているし、皆が活き活きとしていたね」
「そうでしょそうでしょ。これもひとえに、我が兄ヴィロナ公ガンバーリと、私……、私達、兄弟の力なのです」
今、私の力です。って言おうとしてたよね? 自己評価高いね~。
「さすがだね、ヴェルディ家にヴィロナ公国を任せて良かったよ」
これには、ガンバーリさんや、アペリーロさんが、嬉しそうな顔をしているのが見えた。
「それで……」
サンブールさんが、そう言いながら、僕の
「我がヴィロナ公国こそ、ダリアの
「ダリアの覇者ね〜」
確かに、ヴィロナ公国は大きい国だし、経済力もある。だけど覇者か〜。南にはバブル王国、東にはネルドア共和国、そして他にも経済力のあるゼニア共和国やビオランティナ共和国、さらに、ジローナ共和国などもある。難しいでしょうね~。
「難しいと思うよ」
「はい、陛下は、お許しにならないと思いました」
「ん?」
どういう意味?
「陛下がおられる限り、ダリアの覇者足らんとする、ヴィロナ公国の
と、サンブールさんが言いかけると、ガンバーリさんが、立ち上がり。
「サンブール! 我々は、そんな事は考えておらんぞ!」
本気で、怒っているようだった。
場の空気がピリ付き重くなる。僕は、赤ワインを
「ガハハハ。いつまで、くだらない話をしているんだ、サンブール。座れ座れ、今日は陛下の歓迎のパーティーだぞ。楽しめ楽しめ。ガハハハ」
そう言いながら、サンブールさんの手からワインの
「あっ、それは……」
「プファ〜! ガハハハ。うっ!」
いやっ、よくそんな
「うぐぐぐ。ぐあっ。うっ」
「どうしたの、スプリッアーさん?」
スプリッアーさんが、突然、
見ると、顔色が灰色になっていた。そして、
すると、僕も、胃がムカムカして、焼けるように熱くなる。そして……、意識が遠くなる。
僕も、どうやら血を吐いて倒れたようだった。
「陛下!」
アペリーロさんの声が聞こえた。それと同時に、大勢の兵士が入ってくるガシャガシャという音が聞こえるような気がした。
意識が
「陛下を、お守りしろ!」
「とりあえず、斬り抜けましょう」
アペリーロさんと、アンディの声。そして、
「逃がすか!」
サンブールさんの声。
「私じゃ、私じゃない」
ガンバーリさんの声が聞こえ。そこで、意識が途切れた。
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