第142話 第一次ダリア遠征⑥
「ご苦労様、ガルプハルト」
「はっ! 有り難きお言葉」
「うん」
僕は、
後々、この場所には、ちゃんとした防衛設備のある城が、建てられる事になるが、今の宮殿には、なんの防衛設備も無いと言って良かった。
さらに、守備する兵士も多くなく、あっさりと
その時、オーソンさんに連れられて、ヴェルディ家の方々がやってくる。
オーソンさんは、ヴェルディ家の方々を連れてくると、スッとその場を離れ、僕の背後に
僕の
「この度は、おめでとうございました。陛下の
「うん、ありがとう。え〜と、ヴェルディ家の方々だったかな? 協力感謝するよ」
まあ、
「はっ」
「で、ヴェルディ家の……」
「これは、失礼致しました」
ヴェルディ家の方々は、今までひざまずいていたが、1人がスッと立ち上がると。
「私がヴェルディ家の
「ガンバーリさん、よろしくお願いします」
長男のガンバーリさんは、真面目そうな方だった。目に迷いはあるが、信じようと純粋でまっすぐな視線をこちらに送っている。
背はダリア人の中では、普通だろう。体格は大きくないが、戦いの中で生きてきたからかガッチリとしていた。そして、外見は、一般的なダリア人そのものだった。
肌は白よりは、やや浅黒い。茶色の髪でブラウンアイ。比較的目鼻立ちはっきりしており、彫りが深い。まあ、これはヴェルディ家に共通の事でもあったが。
「そして、隣におりますのが……」
「おうっ、よろしくな!」
「おいっ、馬鹿!」
「あっ、えと、申し訳ない。えっと、次男のスプリッアー・ヴェルディだ、じゃなくて、です」
「ハハハハハ、気にしなくて良いですよ」
まあ、この方も
「昔から力だけは有り余っていまして、教会で学べば、少しは大人しくなるかと思ったのですが、変わらずこの
「そうですか、よろしくお願いします。スプリッアーさん」
「おう」
その瞬間、両脇から
「いてっ」
「そして、三男の……」
若いが、綺麗な口髭をはやした、背の高い青年が立ち上がり挨拶する。
「陛下、お初にお目にかかります。ヴェルディ家の三男、アペリーロ・ヴェルディです」
この方は、ちょっとキザだが、軍人タイプの方のように見えた。背は高く、引き締まった身体をしている。目には、余裕を
もしもの時は、斬り抜けるようにと考えているのかもしれないな。面白い人だ。
そして、最後に野心家の四男さんが、自ら立ち上がり挨拶する。
「ヴェルディ家四男のサンブール・ヴェルディです。この度は、陛下にお会い出来たこと、そして、助力出来たこと。私の幸せでございます」
「そう」
さて、顔に笑みを浮かべて、サンブールさんが、挨拶する。若いね~。自分は、頭が良いですよ。と表現したいようだ。
体格的には、長男さんと同じようだった。自分は、頭脳労働者です。という感じで、せんの細い印象を受ける。そして、イケメンと言っても良いだろう。
僕は、あらためて4人を見渡しつつ。
「で、この度の協力に対して、お返ししたいけど……。そうだ、ガンバーリさん」
「はい」
「マインハウス神聖国皇帝の
「そ、それは、有り難き幸せ」
「そう、良かった。ああ、
「は、はい、有り難き幸せ」
ガンバーリさんは、そう言いつつ
「そうだ。後、ヴィロナの僭主のグイット・コラドーレさんだけど……」
「はい」
「引き渡すから、処分任せるよ」
「ははっ、かしこまりました」
ガンバーリさんは、そう応えると、次男のスプリッアーさんを見る。コクンとうなずく、スプリッアーさん。さて、どうする気かな?
こうして、ヴェルディ家の方々と対面し、他にエリスちゃんや、カール
「陛下、おめでとうございます。こんなにもあっさりと、ヴィロナを落としてしまうとは」
「まあね。僕も早く戴冠式をやって、帰りたいし」
「そう、その事なんですが」
「ん?」
アルオーニさんは、そう言って、
「
そうだった。すっかり忘れていた。
そして、今は次期教主様を選ぶためのコンクラーヴェ中。だが、枢機卿団全員で、コンクラーヴェを行うわけではなく、
というわけで、アルオーニさんは、そういう方たちに声をかけてくれたのだろうが、かんばしくなかったのだろうか?
「そう、苦労かけるね。僕の評判が良くないの?」
「いえっ、そういうわけではなく……」
「ん?」
アルオーニさんは、頭をかきつつ。
「協力を申し出て頂いた枢機卿が問題で、他の方が嫌がっております」
「はい?」
「申し訳ありません」
「いやっ、それは良いけど誰なの?」
「はい、セロラ・ダロウナ
「えっ、あのパラーリ事件の?」
「はい」
セロラ・ダロウナさん、パラーリ事件でポルファスト8世を暴行した方だ。だけど、枢機卿になっていたんだね~。
「そうか~、嫌がらせかな?」
「いえっ、純粋に協力したいようです。ランド王国にとっては、
「そうか~。用済みね〜」
フェラードさんは、こういうところは、
さて、どうしようか? カール従兄さんに、交渉をしてもらうかな? ランド王国に
「カール従兄さんに、交渉をお願いするか……。後は、良い手ある?」
「そうですね~。
「圧力?」
「はい、ヴィロナをあっさりと攻略した事は、
「慌てて、出てくると……」
「はい」
う〜ん。これだともう、フェラードさんと変わらないけど……。まあ、最終手段としては、仕方ないかな? ミスったな~。これだったら、コンクラーヴェ終わってから、新しい教主様に……。だけど、ランド王国が圧力を高めている今、ランド派の教主様が戴冠式の実行を断れば、元も子もないんだよな~。
「最終手段としては、有効かな? とりあえず、引き続き交渉をお願いします」
「はい、かしこまりました」
そう言って、アルオーニさんは、帰って行った。
そして、翌日。
「
「はっ、はは!」
ヴィロナの大勢の市民が広場に集まり、この芝居のような
どうやら、あっという間にヴィロナを攻略したのが、良かったようだった。
「マインハウス神聖国皇帝として、ガンバーリ・ヴェルディに公爵の地位を与える。ヴィロナ公として、余の為に
「ははっ、有り難き幸せ」
そして、僕は、ヴィロナ公国の新しい紋章を送る。ヴェルディ家の、人が蛇に飲み込まれているような
ガンバーリさんは、ひざまずきながら
ここに、本当の意味でヴィロナ公国が、誕生したのだった。
さて、これでよし。後は、エリスちゃんを待つだけだ。エリスちゃん達は、ベラッキオをたって南下しているはずだった。
その夜、僕は、アンディ、ガルプハルトと共に、そっと屋敷を抜け出す。
せっかくのダリア、しかも食の街と言われているヴィロナにいるのに、外で食べないという選択肢は無いのだ。
「しかし、良いんすかね〜」
「グーテル様が、良いって言っておられるのだ。それに、グーテル様の事を知っている人間も少ないし、治安も良いと聞く」
「はあ、そうっすか。じゃあ、良いんですが」
アンディは、心配そうに、ガルプハルトは
もう目標の店は決めてあった。今日は、
ダリア地方は、高級レストランから、リストランテ、トラットリア、オステリア、タヴェルナ、バールとなっていた。バールだと、ちょっとしたおつまみ食べつつ、立ち飲みになってしまうので、庶民の店で、ちゃんと食べれそうなオステリアを選んだのだった。
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