第49話

「るみか、大丈夫なの」

「あれ、私、何してたっけ」

「突然気を失っちゃってさ、

お医者さんが言うには、ストレスだって」

「ストレス?」

「うん、それ以外は何も問題ないって」

「そっか」

奈子の顔が懐かしく感じる。

そうか、本当に私は戻ってきたのだ。

「あの子に休みなんていらないわ、

そんな暇はあの子にないの」

「ですが」

「あの子は優秀だけが取り柄よ

優秀じゃないあの子はいらない」

この声は聞き覚えがあるが、こんなに荒げているところは

知らない。

「なんだろうね」

奈子につられて病室からのぞき込む。

「るみか、

さあ、家に帰って勉強しましょう、

休んでた間の分を取り戻すわよ」

「あの、お母さん」

「何?帰りましょ」

もう嫌だ、勉強なんてしたくない。

そういえばいいのに、

言い出せない。

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