第64話 尊いその②

「まぁ、それでいいや。で? なんだっけ一緒にスタバ行くの? っていうか来て。このままだと一人で行く事になりそうだし」


 そう俺と金城先輩がどこか通じ合った約束を交わした時、サオリがやってきてこう言った。


「クミちゃんが、来てくれるってさ♪ いっくんも知ってるでしょ?」


「クミちゃんって誰?」


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「は? 何言ってんの?」


「何言ってるもなにも………」


「虎杖、下の名前覚えてないだけかもしれないが、クミちゃんって言えば、伊藤クミさんだと思うぜ?」


「うん。そのクミちゃん」


 そう二人から言われるが誰だか分からない。いや、陽キャグループの誰か? とは思うけれど。伊藤………いとう? それで俺が知ってる?


「もしかして、前に隣の席だったりする?」


「「そう、それ!」」


 あぁ、なんとなく思い出せて来た様な? なんとなく陽キャっぽい?

それで、そのクミちゃんとやらが来てくれると。


「でも、いいの?」


「ん。まぁ、この間、アタシと喧嘩した時に『いいじゃん、ちょっとカフェするくらい』って言ってたからいいんじゃない? それにアタシ達も一緒に行くし。変な事にならないでしょ」


 そう、俺たちだけで会話していると金城先輩が話しかけてきた。そういや、先輩の話しなのに蚊帳の外だった。


「それで、クミちゃんって可愛いの?」


「そうですね。自分がお付き合い出来るならしたいですね。昨日、告白してないのに振られましたけど」


 なんか、石井君高校でもすでに振られるのが定番になってない?

告白してないのに。と言うのがより悪化している気がするぜ。


「ぶはっっっw ご愁傷様っw」


「そういう、先輩だってさっき振られたじゃないですか! 変わんないっすよ!」


「あ”ん”? 何か言ったか?」


「いやぁ、なんでもないです………」


 先輩、女の娘だけに弱い感じなのか、それなら見た目通り、強気の女の娘との方が相性いい気はする。本人の好みと、相性って別なんだな。


 ひとまず場が落ち着いた感じがししたので、リナに声をかけた。


「と言うわけで、俺たちも行く事になったから」


「そう? でも、来るなら、ちょっち遅くない? まぁいいケド」


 そう言いながら、俺の手を掴んで来たリナ。心細かったんだな。そうだよな。突然知らない先輩と二人っきりって、男同士でも緊張するのにな。


『先輩、それなら、私が行こうか? スタバくらいなら良いよ?』って言ってはいても、すぐに『グループで行きましょうよ。せっかくこうやってお互いに自己紹介したんですし』くらいは言うべきだったか……そんな、コミュ力が必要なのか陽キャって奴は。


 そんな事を思いつつ、リナと二人で見つめ合ってしまっている。少し拗ねた感じの顔を見て居ると、その顔をいつもの笑顔にしてあげたくなる。そんな気持ちを感じた。


「っで、アンタらいつまで、見つめ合ってんの? アタシが、クミちゃん呼んだんだから、まずアタシを褒めるべきじゃないの?」


「ありがとうっママ!!」


 そう言いつつ、リナがサオリの胸に飛び込んでしまった。女の娘二人が、抱き合ってる所って『尊み』を感じてるだけで居たいそんな気がする。


「ほら、アンタも来てよ。まぁ、リナちゃんが良ければだけど」


「いいよー。ギュってして♪」


「いいの?」


「嫌なら、しなくていいけど?」


「来ないなら、この胸は私のもんだっ。んっ、やっぱ柔らかい♪」


「ちょっと、頭グリグリしないでよ。いっくんが見てるのに。っあ♡ んっ♡」


 サオリの胸が頭グリグリし始めたリナ。


 そして。今のやりとりで完全に息子が反応しました。人が居る往来で、近づいたら変質者だ。いいなぁ、いいなぁ。早くあれやりたいなぁ。今度サオリにお願いしよう。そうしよう。


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一方、金城先輩と石井君は


「なぁ、俺たちって何見せられてんの? これから、あいつら3Pでもすんの? もう帰っていい?」


「わかんないっす。でも、いいですね。あれ」


「あぁ、いいな。あれは。クソっ、もっと早く行動してれば」


「あぁ、無理だと思いますよ。なんか、昨日の後、白井(サオリ)さん、体調崩してましたし」


「マジかよ。生理的にダメって奴? それは……さすがにショックだぜ」


 メンタル強い、金城先輩が落ち込んでしまった。生理的にダメってキツイよな。それぞれが物思いにふけってると。サオリのスマフォに通知が来た。


「クミちゃんから連絡『結局どこ行けばいいの? 待ってんだけど?』だって」


「………会う前に、好感度ダウンした気がする。なんなんだよ。まったく」


「まぁまぁ、金城先輩良い事ありますって」


「虎杖、お前が言うな」


 そう言って、俺の肩を小突いて来た。先輩。痛くはなかったけれど、小突かれた場所がなんだか暖かくなった気がした。


つづく

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あとがき


ヒロイン同士のイチャイチャが好きです。

ゆるゆりは良いものです。

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