第48話 二人は交感したい
「待った?」
「いや、待ってないよ」
「言ってみたかっただけだよ」
そう言って朗らかに笑ってるサオリを見て思ってしまった。俺には悩んでいる所を見せてくれないのかな。頼りないからなのかな。そう思うと少し胸がチクリとした。
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サオリは裾が長めのパーカーを羽織っていて、下は短パンを履いていてその下にハーフレギンスが見えて居る。髪の毛も上にまとめていて。軽い運動くらいならすぐに出来そうな服装だ。部屋の中での格好はさすがに露出が多すぎたもんな。
「どこまで行こうか、近くの公園まで?」
「そうだね。そうしよっか」
「じゃ、いこうぜ」
そう言って歩き出す俺たち。恋人同士ならここで手を繋ぐもんなんだろうけれど。サオリとの距離感はどうしたらいいのか分からない………なんか最近はリナの方が距離感近いくらいだし。。。無言なのも具合が悪いので、声をかける。
「クラス委員の仕事大変なんだって?」
「ん、まぁね。。。でも大丈夫」
「大丈夫じゃなくなったらちゃんと言えよ」
「でも、いっくんに頼れる話じゃないし………」
「そうは言っても何か出来るかもしれないだろ。どっかに遊びに行くとか」
「もぅ、なんで、遊びに行くのよ」
「気分転換は大事だろ?」
「そうだけど。そう行かない事もあるの」
「他にも何か出来る事あったら、するからさ。何が出来るか分からないけど」
「うん。ありがと」
そんな会話をしつつ、近所の公園に着いた。この公園は、木が植えてあって日陰にいると涼しくて、心地が良い。小学生の頃は割と遊びに来ていた思い出の公園だ。
思い出を振り返っりつつ歩いて居ると、サオリが立ち止まってしまった。顔を見ると、なんだか辛そうな顔をしているので近くに寄って、声をかけた。
「どうした?」
「ごめん、やっぱちょっと辛い………」
「もう、、、頑張らなくて良いんじゃないか?」
「そんな事出来ないよ」
そう言いながら俯いてしまったので、思わず頭を撫でてしまった。昔はすぐ頭を撫でてしまっていたが、今は髪の毛をセットしているので撫で辛い………。
軽く触れる程度になってしまっている。
「ん”」
「ん?」
「ん”ん”」
サオリが手を広げてアピールをしてくる。多分、ハグをして欲しいアピールなんだろうけれど。ここは外だし。少しとは言え人通りがある。。。
「早くして、助けてくれるって言ったでしょ」
「おぅ」
そして公園の木陰で、虫の鳴き声を聞きつつ、優しくハグをし合う俺たち。
サオリは俯いたままだから、頭頂部のあたりから良い匂いが漂ってくる。
パーカー越しだけれど、華奢な背中も感じ取れて男の俺とは違うな。と感じてると。
サオリが、強く抱きしめて来た。
「ん””」
「んん?」
「もっとギュッとして!」
そう言われたので、ギュッとする。そうすると胸が押しつぶされてしまい。
ドキドキする。女の娘の体って柔らけぇ。。。
「もっと!!」
「え、もう結構強いぞ?」
「いいから!!!」
そう言いながら、サオリが顔を上げると、少し涙ぐんでいる様だった。そんな顔でお願いされたら、言われた通りにするしかないじゃないか。そう思って頬と頬をが当たる様に抱き合いつつ、もっと力を入れてギュッとした。
サオリも俺の体をギュッとしてくれてたまま、しばらく時間が過ぎた頃、ちょっとイタズラ心が湧いてきた。びっくりさせてやろう。そう思ってお尻のあたりで腕を組んで、体全体を持ち上げた。いわゆる抱っこの体勢だ。
そのまま、持ち上げながらちょっと回転する。
「えぇ! 何なに??」
「どう?」
「ど、どう? って?」
「楽しい?」
「え、うん。ちょっと楽しい。でも重くない?」
「最近、筋トレしてたからかな。思ったより軽いよ」
「もう、そこは普通に『軽いよ』でしょ」
そう言いながら、サオリが笑ってくれた。どうやらサプライズは成功したらしい。
こんな事で、笑顔になってくれるならいくらでも、やってあげられるよ。
しばらく、そうやって過ごして、そろそろ腕が辛くなって来たのでサオリを下ろしてまたハグする俺たち。最初、外でハグする事に抵抗感を持っていたのが嘘の様だ。
でも、そろそろ帰らないとリナも待って居る。
「そろそろ帰ろうか」
「えー。もうちょっとこうしてたい」
「後でも出来るだろ?」
「そうだけど」
名残惜しそうなのは嬉しいけれど、時計を確認するとさすがに時間取り過ぎた。
このままだとリナ先生に怒られそうだ。でも、なかなかサオリが動こうとしないので手を取って歩き始めた。幼馴染のサオリと手を繋ぐのは、久々な気がする。ハグはこの前もしたのになぜなんだろうな。
渋々と言った感じで、サオリも歩き始めてくれたのでそのまま家に帰る道中で、改めて思った。関わる人が増えてしまうと人間関係って途端に複雑になるんだな。と。
つづく
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あとがき
女の娘を抱っこしたくない男子なんていないっ。
なぜならば目の前には2つの桃源郷があるんです!
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