第6話 偽者 ダリウス
六歳までダリの勉学を見てくれていたチャーチルは言った。
「新しい侯爵様は昨日の内にロイルの神殿の神官にヴィクトル家の家宝のルベライトを見せて、正式に公認されてますよ」
チャーチルはかぶりを振りながら言った。
「嘘だろ……僕の所に迎えの使者が来たのは今日なのに……」
「違う勢力が動いたようですね。ルベライトはどうしたのですか!?」
絶望的な顔をするダリにチャーチルは言う。
「育ての親に売られた……他に身の証をするものは何もない」
「わたしは信じますよ。チルと私のことを呼んだのは坊ちゃまだけです。では、あのお方は誰なのでしょう?」
奥の方から声がした。
「執事、誰か来たのか知らないが、私は、誰にも会わぬと伝えろよ」
ダリと同じ年頃の男の声だ。
「は、はい。かしこまりました。侯爵様」
チャーチルは忠実な執事らしく返事をした。
「坊ちゃま。今日はお引き取りを。侯爵様は誰ともお会いになりません。
今日、復位のお祝いに来られたお客様、皆様にもお会いになっていないのですから」
「どうしてなんだ?」
「分かりませんが。人嫌いのようですね。お若いのに」
チャーチルは、興味なさげである。
「くそ!!どうしたら良いんだ?」
ダリは溜め息をつきながら、悔しそうに舌打ちした。
「神殿に申し立てしては如何でしょう?おかしなこともあります。
以前に侯爵様に仕えていたものは私以外はおりません。
私も、専門外の執事としてここへ呼ばれました」
「そうだな。ここでお前の職を失わせては申訳がない。
分かった、神殿に行こう。僕が、ダリウス・ヴィクトルだから」
ダリは、少し希望が持てた。
そして、ベラの待っている宿屋に戻って行った。
そうしたら、ベラまでいなかった。
荷物が無かった。
宿の主に聞くと夕方金を払って、引き払ったそうである。
なので、今日のダリの宿はない言われた。
ダリは、いきなり大都市のディナーレで一人放り出されてしまったのである。
「ルベライトのこともそうだが、誰なんだ? 僕の偽物を騙るなんて!」
メタモルフォーゼの花嫁 私が変わらなければ彼とは結婚できないの?~ 月杜円香 @erisax
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