第5話 身の証のルベライト
ダリは、育ての親代わりのバズとべラと共に、ヴィスティンの首都のディナーレにやって来た。
だが、ここで思わぬ、事態が待っていた。
ヴィクトル侯爵家に代々伝わる、家宝のこぶし大のピンク色のルベライトの置物が無くなっていたのである。
犯人はすぐに分かった。
バズが、博打の資金に売ってしまったのである。
一番困ったのは、ダリとベラである。
ダリは身の証になる物を無くし、ベラは侯爵家の子を育てて、褒美を貰おうと思っていた。
迎えに来た者にルベライトの確認を求められ、ベラに預けてあると言ったダリ。
ベラは、水晶に色を付けた紛い物で誤魔化そうとした。
それを見て、ダリはやられた!!と思った。
さもその紛い物を、本物のように語るベラ。
本物とは、色が違い過ぎる。色がくすんでいるではないか。
この時点でバズはいなかった。
トンズラしたのだろう。
当然、迎えの使者は帰って行った。
ダリは途方に暮れた。
王城が無残に崩れ落ちていた。
ダリの心も王城と同じ状態だった。
ダリは一人で、6歳まで住んでいた館を訪ねてみた。
すると、人の気配がする。
いるはずはないのだ。
ベラにこんな田舎(デュール谷)で宿屋をやるなら、ディナーレの屋敷を使えばいいのにと言ったことがある。
その時にベラは、
「あの家はもう、神殿の管理下にあって、もう誰も住んではいないよ。」
と言った。
「ダリウス・レム・ヴィクトルは僕だ!誰が偽物を騙ってるんだ!」
ダリは悲鳴に近い声で屋敷に入って行った。
「ここはヴィクトル侯爵家でございますぞ。玄関で騒ぎは困ります」
執事のような男が現れた。
ダリには見覚えのある顔だった。
「お前、チルだな?チャーチル!僕だ!ダリウスだよ」
「は、はあ……その呼び方は、ダリウスお坊ちゃま!では、あのお方は誰です?」
「ルベライトは、育ての親に売られいてた。お前しかいない、僕のことを証明し欲しい!」
「しかし、坊ちゃま。遅かったです。昨日、ルベライトを持ったダリウス様が新しい侯爵様になられました。」
「それは、速すぎる。僕の所に使者が来たのは、今日の昼だ。」
ダリウスと元、ダリウスの家庭教師だったチャーチルは顔を見合わせて首をひねった。
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