第172話 明るい朝食

食堂に向かうと、くるみや女性たちが朝食を用意していた。

「おはようございます」

くるみはいの一番に挨拶をする。


「今朝は煮魚でございます」

「昨日、民が持ってきてくださったのですよ」

「おお、魚ですか!」

隆景の目が輝く。

隆景の拠点は、海の近くだ。

やはり、慣れている海の幸が嬉しいようである。


「そして、もちろん山菜もございますよ。くるみ殿の提案で、炊き込みご飯にいたしました」

「炊き込みご飯かぁ!」

悠月が目を輝かせる。

悠月は、実は炊き込みご飯が好物だからだ。

「そういえば悠月って……」

松井はニヤッと笑いながら言う。

「……そ、そうだよ! 炊き込みご飯が好物だ」

悠月は照れながら白状する。

その様子に、隆元は笑った。


「さてと、御膳は揃いましたよ」

「うむ、ご苦労であった。」

「感謝していただきましょう」


隆景はやはり、魚を美味しそうに食べていた。

しかも、がっつくわけではなく、少しずつ丁寧に食べていく。

「隆景は食べ方がきれいじゃな」

少し遅れて入ってきた元就が言う。

「父上の教えですよ」

隆景は照れ笑いで答えた。


「おお、今朝は煮魚か」

元就は御膳を見て嬉しそうに言った。

「民が持ってきてくれたようです」

隆元は明るい声で言う。

「うむ、感謝していただかねばのう」

元就は再び明るい声で言う。


「うーん、美味い!」

「炊き込みご飯も美味しいね」

「今日はいつもより豪華な気もするけどな……」

「確かに」

松井と悠月はそう言って笑顔になる。

「けど、美味しい飯が食えるのは幸せだよな」

「そうだね! 今日も頑張ろう!」

「おう」

二人の明るい声での会話に、元就も心なしか頬が緩んだ。

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