第159話 出陣要請

勢いのある吉川隊。

とはいえ、城は勢いがあればすぐに落城するわけがない。


「門を閉めよ!」

小笠原はとにかく防御に転じた。

時間を稼ぐ必要があるからである。


尼子からも加勢がやって来た。

「小笠原殿、援軍に参った!」

多胡 辰敬らを筆頭に、尼子から救援がやって来た。


「おお、これでここも陥落は免れそうじゃ」

小笠原はホッとしたように言った。


だが、状況はそう簡単には好転しない。

攻撃してくるのは、もちろん吉川隊だけではないからだ。


「むぅ、すぐに陥落できると思ったんじゃがな……」

「退け、元春!」

元就の命令で、元春は一時撤退した。


「勢いももちろん大事ではあるが、今はそれだけで温湯城は落ちん」

元就は厳しい声で言う。

「そのようじゃ」

元春も苦笑いで応じた。


「念のため、隆元には状況が整い次第隆家殿に留守居を代わってもらい、こちらに出陣するよう使いを出しておいた」

「兄上も来るんか?」

「ああ、そのようにワシが手紙を使いに託したからの」

今頃、隆元は大急ぎで出陣の支度をしているだろうな、と話を聞いていた悠月は思った。


数日後。

吉田郡山城では、元就の使いが到着していた。

「隆元様に謁見を!」

「どうしたんじゃ?」

隆元はその言葉に驚きが隠せない。


「父上に何かあったのか?」

「こちらが、元就様より預かった書状にございます」

隆元は使いから手紙を預かる。

「うむ、拝見いたす」

隆元はそう言って、手紙を開封する。

「……出陣か。お主と共に出陣するよう言伝がある。少し支度に手間取りそうじゃから、お主は支度が整うまで城でゆるりと過ごしておれ」

「は、はあ……」

使いは思わぬ言葉に生返事を返した。


「さて、戦況はどうなっておるか……」

隆元はそう言って、奥の間に足を向けた。

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