第136話 隆家出陣

石見銀山の攻略を考え出して数日。

尼子が襲撃を仕掛けたという話を聞いた。


「あまり悠長には考えていられないな」

悠月は困り顔で言う。

「そうだね……!」

松井も同意する。


元就は、その知らせがお届いてから、誰を出陣すべきかということに悩んでいた。

「殿、あまりゆっくりはしておられませんぞ!」

宍戸隆家はそう言って、少しせっつく。

元就はそれを見て、隆家を見つめた。


「隆家……!」

「何でございましょう」

「お主に出陣してもらうことにしようかの」

「は……、はぁ……。……ん!? 私でございまするか!?」

隆家は思わぬ言葉にびっくりする

最近はどちらかと言うと、留守居役の方が多かったからなおさらだ。


「わ、私で宜しいのでしょうか?」

「五龍に子でも出来て生まれるとか、そういった事情がないのならすぐにでも出陣の用意をしてもらいたい」

「かしこまりました、殿!」

隆家は少し戸惑いながらも、五龍城へと戻り、出陣の支度を始めることとした。


元就は、とにかく尼子の手に渡らなければそれでよい、と考えることにした。

尼子に渡し、軍資金として彼らの懐が潤い、結果軍事力が強化される。

このことだけは、元就としては避けたい事態であった。


「それにしても、とんでもない話になって来たなぁ」

松井はつい言葉に出す。

「まあ、な……。領地問題だけの戦いじゃないってことだよ」

悠月も苦笑いで言う。

「お主らも、良ければ隆家に付いていくか?」

元就はどこかからかうように言った。


「どうする? 悠月」

「付いて行こうかな。俺、銀鉱山やら銀鉱石なんか見たことないし」

「あ、それは僕もだ……!」

「行くか? 戦には役立てないけど」

「それもそうだね」


二人はかなり早く着いて行くことを決めた。

数日して、隆家は出陣の準備を整え、出発前に元就や隆元に挨拶をしに来た。

「殿、行って参りまする!」

「気を付けてな」


悠月と松井も一緒に付いて、石見銀山へと出陣をする。

そこで地獄を見るとも知らずに。

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