第126話 大内の滅亡

大内義長と内藤隆世の軍勢のみとなった大内軍は、厳島の戦いの後に築城が始められたばかりで未完成の高嶺城に籠城し高嶺城の南の守りとなる支城・姫山城には宍道隆慶が入っていた。

「城はまだできぬかのう……」

「そうすぐにはできますまい」

義長の言葉に、家臣たちも冷たく言う。


しかし、先の4日に行われた杉重輔と内藤隆世による戦いで山口の町は焦土と化しており、そこへ元就に与した吉見正頼も阿武郡渡川の野上房忠勢を排除して宮野口へと迫っていた。

「きっと復興には長い年月がかかりましょう」

「致し方あるまい」

元就もそれは承知の上であった。

「じゃが、ここからの政務が大変じゃな」

元就は誰に任せるか、しっかりと悩むことになった。


京都同様に防衛には向いていない山口を放棄した義長・隆世らは長門豊浦郡の勝山城へ逃亡した。

「毛利へと伝わるのは、いつごろじゃろう」

「そうそう早くはないと思いまする」

実際、その知らせは数日遅れであった。

その情報は、15日には毛利本陣に報告された。


「大内も呆気ないもんだ」

「まあ、俺たちもその大内によってこういう将兵になったというのもあるがな」

「それとこれと、話は別だな」

兵たちの間で、陣中でもその話で持ちきりになった。


毛利軍は山口へ侵攻し、姫山城の宍道勢は降伏した。

毛利本隊は山口の占領に動き、大内義長追討は福原貞俊に5,000の軍勢を預けて一任することとなる。


「ああ、もうだめか」

「毛利殿へと、防府の街を譲らねばなりますまい」

「彼であれば、うまくやってくでるじゃろう」

義長は覚悟を決めたようにそう言った。

大内義長「誘ふとて 何か恨みん 時きては 嵐のほかに 花もこそ散れ」

野上房忠「生死を断じ去って 寂寞として声なし 法海風潔く 真如月明らかなり」

という句を残し、世を去った。


元就はその句を胸にしまう。

「ワシらがしかと後を引き継ごうぞ」

元就はそう誓った。

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