第123話 難攻不落の堅城
隆景の撤退を伝令された元就は、何一つ言わずに頷いた。
「隆景の事じゃ。ちゃんと考え合っての撤退であろう」
「隆景様は、いたずらに攻めることで我が方の兵力を消費したくない、と」
「隆景らしいのう」
元就は特に何を言うわけでもない。
撤退を終えた小早川隊に対しても、元就は労いの言葉以外何も言わなかった。
「城は難攻不落、ワシもそれは分かっておるが、お主ほど迅速に撤退を考えたり、兵力の損害を考えたりはできんかったと思う。ようやったぞ、隆景」
「父上、恐れ入ります」
隆景は元就に頭を下げるのであった……。
それから数か月。
同じ城をもう一度攻めることとなる。
元就はその際、隆景ではないものに頼もうと思っていた。
「隆元」
「はっ!?」
隆元は驚いて声が上ずる。
「お主にこたびの戦を率いてもらおうと思う」
「ですが父上、そこは難攻不落、さらに我が弟の中でも切れ者である隆景ですら落とすことができなかった城ですぞ!」
「じゃから隆元、お主に頼んでみようと思うたんじゃ」
「はあ……」
隆元は驚きつつ、元就からの指名に頷くほかなかった。
隆元は手勢を率いて須々万沼城に攻め込むよう段取りをする。
だが、思っていた以上に足場が悪かった。
沼に足を取られて、進軍のままならない兵さえ続出した。
「水位はさほどではない、とはいえ、こうも足場が悪いと我らも攻め込むのが困難か……」
隆元はどうしたものか、と頭を悩ませる。
兵たちもウンウン唸る。
「船があればのう……」
「いや、この程度であれば逆に船は不要ぞ」
「そうじゃろうか?」
「浅すぎて、船底を引き摺ってしまう」
「それもそうじゃな……」
「馬ではどうじゃ?」
「否、馬でも足を取られて上手く走れんのう」
「参ったのう……」
兵たちも討論しても埒が明かない。
隆元は数日粘ってみたが、状況は良くならない。
「……やむをえまい。我らも退こう」
隆元は早急に撤退命令を出したのであった……。
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