第121話 城攻めの命
岩国・永興寺。
元就は占領した玖珂郡の慰撫と戦力再編の後、そこへ本陣を移した。
そこで元就は、水軍を指揮した隆景に、使いの兵を送った。
「隆景の元へ、これを頼むぞ」
「はっ!」
兵は元就から手紙を受け取り、隆景の元へと急ぐ。
同時刻。
隆景は、紙に筆を進ませていた。
父である元就へと手紙を書いていたようである。
「達筆だな」
「全然読めん……」
「ゆづ兄様、ありがとうございます。松兄様、読もうとしないでくださいよ」
隆景はむすー、とふくれっ面をする。
「こういうところが可愛いんだよな、隆景は」
松井はケラケラ笑った。
「隆景様―!」
「何事じゃ?」
隆景は筆を置く。
そして、それを好機と手紙を読もうとする松井の手をペシッ、と叩いて制止する。
「元就様より、隆景様にこちらを、と命じられました」
「拝見いたす」
隆景は元就からの手紙を開封する。
「父上から……」
「どうした?」
松井は心配そうに声をかける。
「城攻めのお話です」
「また戦か……」
松井は憂鬱そうに言う。
隆景も心なしか表情が暗い。
「それも、相手は堅城。たやすくはありません」
その言葉に、悠月も頷く。
「須々万沼城、あそこは難攻不落と言われております。我らの手勢でどう動くか……、攻め落とせなければどうなるか、私も想像ができません」
隆景はそれでも、と言葉を続ける。
「父上が言うのであれば、私は出陣します」
隆景は兵をねぎらった後、本陣へと戻る姿を見送った。
「本当に行くのか、隆景」
「ええ。これが武士の運命でもあるのでしょう」
少し寂し気に言う隆景に、松井も悠月も何も言えなくなっていた。
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