第93話 破滅の始まり

神辺城、陥落。

これにより、尼子勢は備後攻略の為の拠点を失った。

山名氏も、出雲へと逃走している。


「この戦も、長かったもんじゃ……」

「そうじゃな。……平賀殿、終わったぞ」

戦後処理の為に派遣された弘中隆包と青景隆著はしみじみという。

今後、神辺城の城番は青景が担当することとなった。

これにより、備後外郡一帯の大内氏拠点となった。


平賀は東広島で葬られた。

義隆は彼の労をねぎらった。

平賀家は、義隆の介入もあって小早川庶子であった義弟が継ぐこととなる。

そもそも、平賀隆宗には実の弟がいたのだが、義隆は彼を後継にすることを拒んだ。


「なぜでございますか! 隆宗には新九郎という弟がおります。なぜ亀寿丸に相続をさせるのですか!」

隆宗の祖父の平賀弘保は当然のように抗議する。

詳しい理由は義隆も語らなかったが、彼を寵児していたことがきっかけであろうと弘保は推測していた。

表立ってはもちろん、反発することはできない。


そして、亀寿丸はしばらくして元服する。

義隆より義隆より偏諱を受けて元服し、隆保と名乗ることとなった。


元就はその様子に、憂いを覚える。

「……もしかしたら、義隆殿の時代は長くないのやもしれんな」

「父上、そのようなことは……」

「いや、時代は変わるもんじゃ。わしらはわしらでやっていかねばならん」

元就はそれ以上のことを言わなかった。


元春には、書状が届いていた。

「うーむ……」

「どうなされたのですか?」

「いや、いつになったらこちらの城に来るのかと督促が届いておってな」

「それもそうでございましょうね」

新庄局は苦笑いで応じた。

「ワシ一人で決めることでは

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