第43話 勝手な初陣
翌日、元就は天神山の大内本陣へ児玉就忠を使者として使わし、宮崎長尾に陣取る高尾久友・黒正久澄・吉川興経に対して総攻撃をかける計画を伝える。
そして、毛利軍の動きに対抗して尼子軍主力が吉田郡山城に攻め寄せる恐れがあったため、尼子本隊を大内軍で牽制して欲しいと陶に要請した。
「城内には、女子供らも多数おります。どうか、尼子本隊を牽制し、吉田郡山城に攻め寄せられぬよう、お頼み申し上げたく存じます」
児玉は丁寧に申し伝えた。
「かしこまりました。義隆殿にもお伝えしておきましょう、と陶殿よりお言葉を預かっております」
これに対して陶は、末富志摩守を吉田郡山城に派遣して了承の旨を伝えた。
「恐れ入ります」
「この戦、負けるわけにはまいりませんからな。助力は惜しまぬ、と陶殿も大内殿も申しておりました」
「誠にありがたい限りにございます」
志摩守は元就と軍議をし、元就らの丁重な見送りを受けて自陣へと帰っていった。
さらに翌朝、早朝。
元就は本丸内をどたどたと音を立てて早歩きしていた。
「ど、どうされましたか、父上!」
隆元は驚いた様子で尋ねる。
「少輔次郎がおらん!」
「……え?」
「見なかったか、隆元」
「いえ」
徳寿丸は、襖からひょこっと顔を出す。
「父上、兄上に出陣許可を出したって本当ですか?」
「隆元になら……」
元就はその言葉にハッとした。
「これでよし、っと」
「何をしておるんじゃ、少輔次郎!」
「あ、父上。ワシも戦に出ます」
「ならん! お主はまだ元服しておらんのじゃぞ!」
「良いでしょ、父上!」
「さっさと甲冑を脱ぎ、本丸内で大人しくしとらんか!」
「嫌じゃ!」
少輔次郎は元就の反対も押し切り、さっと出て行ってしまった。
「隆元、少輔次郎を守ってやってくれ……」
「はっ。まさか勝手に初陣していくとは、私も思いませんでした」
「勇猛果敢と猪突猛進は別じゃからな。頼んだぞ」
「お任せください、父上」
隆元は苦笑いで弟のお守を引き受けることにした。
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