第38話 正月早々

年が明けた。

三が日の間にも、毛利軍は相合口の尼子軍を襲い、参戦した小早川興景勢から20名ほどの負傷者を出しつつも、尼子兵10数名を討ち取った。


「正月早々、また戦なんだよな……」

悠月は城からその様子を見つめていた。

「戦には盆も正月もなくてのう……」

隆元は苦笑いしながら答える。


「兄上―」

「どうした?」

「父上がいない」

「ああ、父上は少し出かけている。もう一刻もすれば戻るじゃろう」

「そうなの?」

少輔次郎と徳寿丸はつまらなそうに言った。

「父上に用事だったのか?」

「兄上でもいい」

「そうか」


くるみはそのやりとりを微笑ましく見守っていた。

「遊んで」

「まあ、良いじゃろう。二人は何をしたい?」

「雪合戦!」

「徳寿丸もです!」

雪合戦をしたがる二人には、隆元もさすがに困った。

外に出すのには、まだ些か危険である。


元就は陶のところに相談へ向かっていた。

「元就殿、いかがなさいましたか?」

「陶殿、義隆殿はいつ頃こちらに到着なさるじゃろうか?」

「じきに到着いたしましょう」

「そして、総攻撃の時期をそろそろお話せねば、と思いましてな」

陶は少し考えた末に口を開いた。

「義隆殿到着を待たれるのが最良でしょう」

「やはり、のう」

毛利家は元々大内軍の傘下であるのだし、救援要請をしているのだからそれが筋だろう、というのが二人の中で一致した。


数日後、またも毛利軍は尼子へと攻撃を仕掛けた。

火矢を浴びせ、放火をし、尼子を火攻めにしていたのである。

「このままでは、全て史実通りになってしまう!」

松井は焦っていた。

「そうだ……! 他の手段を考えればいい」

彼はほくそ笑んだ。

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