第313話:二つの魂は主物質界へ
八色の光が
≪その光は。ああ、このようなところで再び感じることができるなんて≫
サリエシェルナの魂が確実に反応している。弱々しかった感情が次第に強まっていく。
≪でも、どうして貴男が。人には過ぎたる力よ。エルフ属であろうとも例外ではないわ≫
当然の疑問だろう。
主物質界は無論こと、
ただし、三人を除き、その理を知る者が存在しないのもまた事実であり、知るべきことでもない。
≪言ったでしょう。私には心から信頼を寄せる友がいると。その友が導いてくれるのです。私はただ信じるのみです≫
サリエシェルナの魂が即座に反応を返してくる。それはよい
≪私の知る限り、八色に輝く神のごとき光を纏える御方は、ただ一人しかいません≫
エレニディールの
≪きっと、いえ、間違いなく同じ人物を脳裏に描いているはずです≫
魂の震えは止まり、
エレニディールはひとまず安堵すると、次なる行動に移る。最優先でなすべきことは決まっている。
今のエレニディールに怖いものなどない。
確かに、ジリニエイユの魔術は不快なまでに強烈かつ情け容赦がない。
それほどの力を有するジリニエイユであっても、
≪消えなさい≫
魔術による創造生物はその根元を失ったが最後、存在を許されない。
≪まずは第一関門を突破しました。サリエシェルナ、貴女の魂を幽星界から主物質界へと戻します≫
ここからは
問題は幾つも残っている。
一つは衰弱しきった今のサリエシェルナの魂が界越えの負荷に耐えきれるか、という点だ。エレニディールの推測では、恐らく
それ以上に
≪主物質界に戻ります。まずは界境まで進みましょう≫
もう一つ、主物質界に戻ってからの問題もある。
サリエシェルナの肉体は、ジリニエイユによっていずこかに封じられている。こちらも強固な魔術によって厳重に管理されているに違いない。
特殊な魔術によって分離された肉体と魂は、その
≪鍵となるのはやはりジリニエイユですか。
まさしく
キィリイェーロの兄にして、本来ならば次期シュリシェヒリの長老になっていたとしてもおかしくない男、それがジリニエイユだ。
古代エルフ王国復活による主物質界支配を
エレニディールには全く理解し
古代エルフ王国と
≪サリエシェルナ、教えてください。貴女の知っている限りで結構です。ジリニエイユとは、どのようなエルフなのですか≫
サリエシェルナの魂から反応が消えている。
エルフ属の中でも、王族の血を引くサリエシェルナは誰よりも長命だ。その彼女をもってしても、ジリニエイユは見通せない。
彼はシュリシェヒリの里から二度姿を消している。その一度目のことが全く分からない。二度目がまさに今だ。ただ一つ言えるとすれば、一度里を出た後、シュリシェヒリに戻ってからだ。彼が一変してしまったのは。
≪ジリニエイユは変わってしまいました。あれほどまでに一つの考えに
エレニディールはサリエシェルナ以上にジリニエイユを知らない。ビュルクヴィストから断片的な知識を与えられているだけだ。不安定な感情の波がサリエシェルナにも感じ取れたのだろう。
≪この事実は私しか知らないでしょう。口にするのも初めてです。シュリシェヒリを出て、しばらくの後、ジリニエイユは最愛の妻と子供を得たそうです。その妻と子供を
エレニディールの動揺が大きな波となって具現化されている。聞きたかった情報でありながら、その真逆のことを考えてしまう。
≪最愛の者たちを
サリエシェルナの魂は
≪ある時、ジリニエイユが
来た道とは逆に、複雑な界層を上に向かって進んでいく。上にと言ったものの、感覚的なものだ。実際には方向感覚などないに等しい。
≪よくぞ戻られた、若き清らかな魂よ。探し求めていた魂は見つかったのだな≫
界境の
知らなくとも、分かっていることならある。あれからずっと身近に彼の魂を感じてきたからだ。
≪ずっと
そのうえで、レスティーはナダラレアムにも助力を依頼したのだ。過保護と言えば、そのとおりかもしれない。
≪これを使いなさい≫
エレニディールとナダラレアムのちょうど中間辺り、浮かび上がったのは
≪幽星界が誇る七
サリエシェルナの魂は界越えを果たし、主物質界に戻った瞬間、死を迎える。現状では戻るべき肉体がないからだ。死を迎えた魂の行き先は一つしかない。混沌の
≪その魂を
浮かび上がった
≪サリエシェルナ、よろしいですか≫
この
≪私に選択権などありません。エレニディール、貴男はここまで私を導いてくれました。
青滋の輝きがサリエシェルナの魂に触れ、ゆっくりと包み込んでいく。
輝きが収束した時、サリエシェルナの魂は
≪若き清らかな魂よ、主物質界に戻るがよい。そなたの務めを果たすために≫
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