第309話:見守る者の差異
エレニディールの姿が消え失せた黒き
ジリニエイユが固有魔術によって創り上げた閉鎖空間は、彼にしか出入りが許されていない。仮に何らかの方法をもって無理矢理入ったとしても、黒き檻は絶対に解封できない。
そのためにはオペキュリナの
油断大敵だ。ここに来て、エレニディールを奪われるようなことがあってはならない。彼は絶対的な切り札なのだ。
サリエシェルナとエレニディールとの間に、古代エルフ王国王家の血の
事実を知った時、歓喜のあまり、ジリニエイユは踊り出しそうになったぐらいだ。運をも味方につけたと確信した瞬間だった。
「異常はないようだな。確かに揺らぎを感じたのだが」
納得できないとばかりに首を何度も
「気のせいだったか。ここまで思ったとおりには進んでおらぬ。あ
ジリニエイユにとって、大きな誤算だった。要因は幾つか考えられる。
まずは、手持ち戦力の強化が遅れたことだ。比して、敵戦力が予測よりはるかに強かった。
さらには、当代のみならず先代賢者も
禁書への対抗策にしてもそうだ。そのためにダナドゥーファさえ封じられてしまった。
これら全ての背後にいる人物のことを読み違えていたのか。いや、それはない。
「あの
頭の中でもう一つの声が響く。
≪ならば、早々に決着をつけてしまえばよかろう。貴様の言うところの切り札とやらを使ってな≫
「
以前にも言ったとおりだ。
完全復活を
問題は最後の一つ、大量の
ジリニエイユは
閉鎖空間に
ジリニエイユはそれでも内部に入らず、様子を
≪やけに慎重ではないか。我には魔力も何も感じられないぞ≫
完全復活していないとはいえ、
「実際に見てみれば分かることだ」
ジリニエイユは隙間を抜け、閉鎖空間内部に入っていく。内部がどの程度の広さなのか絶対に分からない。感覚を
他者が侵入できたとして、
実際のところ、ジリニエイユがオペキュリナの
ジリニエイユがゆっくりと足を踏み入れる。違和感はない。
直感に従うか、あるいは錯覚だったと
内部の
「ビュルクヴィスト殿にやられたつけがこのようなところで生じるとはな。ままならぬものよ」
疑念を
「
ジリニエイユの知識をもってしても、完全復活の儀式における三要素しか見出せていない。他にあるとは思えない。
≪あるにはある。だが、大量の贄を集める以上に難しいだろう。時間もかかることだ≫
「その方法とは。どのようにすればよいのだ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
エレニディールの身体は
(私はどこに向かっているのでしょう。我が友の導きとはいえ、これでは先行き不安ですね)
まるで心の声を聞いていたかのように、当の本人、レスティーから応答がある。
≪まもなく
見守ってくれていることにエレニディールは大いに
いつもながらに思うことだ。今でこそ、レスティーと呼び捨てにしている。後にも先にも主物質界に生きる者で、彼を呼び捨てにするのはエレニディールのみだろう。
もちろん、最初はそうではなかった。師ビュルクヴィストに
魔術高等院ステルヴィアのパラティムで、当然ながらエレニディールもレスティーから洗礼を受けている。それは見事なまでに、
スフィーリアの賢者に昇格したばかりの頃、エレニディールもまたミリーティエやコズヌヴィオと同様、少なからず
パラティムでレスティーと
「全力で立ち向かいなさい。そして、
その時のビュルクヴィストには、いつもの
(ビュルクヴィストにしては珍しい表情でした。私は目の前に立つこの
結果は言わずもがな、ビュルクヴィストの言葉どおりだ。
魔力が完全に枯渇、ただ情けなく床に
「まだまだ
最後の言葉に意表を突かれた。
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