第242話:過去の遭遇と名づけ
ロージェグレダムは
放置すれば、この先、いったいどれほどの被害が出るか。想像するまでもないだろう。滅ぼすことこそが賢明な判断であり、剣匠という立場からも成さねばならなかった。
ロージェグレダムは剣匠としての使命と誇りを捨て、
なぜなら、その
ロージェグレダムと
戦いは望まず、己の命を進んで差し出してきた。ロージェグレダムを剣匠と知ったが
「お主は
率先して斬りかかろうとした矢先だ。
「どうか私の命に終止符を打ってほしい。私はもう疲れたのだ」
その言葉に
そもそも
それは一方通行の見方でしかない。
「私はこれまで人に姿を見せぬよう身を
淡々と語る口調にロージェグレダムも
「私とてこの姿で生まれたくて生まれたわけではないのだ。
ロージェグレダムは驚いていた。その言葉に間違いはない。
いつからその呼称が広まったかも分からない。そもそも、
驚いたのはそこではない。この
「ここで剣匠たる貴殿に出会ったのも運命であろう。この命、貴殿に差し出そう。私をこの苦しみから解放してほしい」
魔霊鬼の言葉が胸を深く
これが
ロージェグレダムは思わず天を
ロージェグレダムと
「先ほども言ったとおりじゃ。済まぬ。儂にお主は斬れぬ」
ロージェグレダムにとっても、このような思いを抱くのは初めてのことだ。本来ならば迷わず斬るべきであり、相手もそれを望んでいる。わざわざ命を差し出してきている。心を鬼にすべきだろうか。胸の内に葛藤がよぎる。
(大師父様、儂はどのようにすればよろしいのか。この者を前に、儂は初めて斬ることを
大師父たるレスティーに答えを求めたわけではない。思ったままを心の中に浮かべたまでだ。
≪そなたの思うがままにするがよかろう。この者と呼んだ時点でそなたの心は決している≫
少しの間が置かれた。レスティーにとってさえ、判断に遅滞を生じさせる出来事であったか。知る
≪承知いたしました、大師父様≫
明確な指示だった。ロージェグレダムの迷いはそこで吹き飛ぶ。
思うがままにしろ。それはすなわち判断は任せるということだ。何よりも数呼吸置いた後の言葉だ。そのためには、今すぐ滅するのが最善だ。
≪儂なりの
「名はないと申したな。では、儂が授けようではないか。言葉を交わすに、意外と不便でな。その前に、儂は三剣匠が一人にしてビスディニア流現継承者のロージェグレダムじゃ」
あまりの予想外の展開に
「ロージェグレダム殿は何を考えているのだ。人にとって
ロージェグレダムは静かに首を横に振る。そこに言葉はない。不要なのだ。
「ゴドルラヴァでどうじゃ。お主に異存がなければじゃが。そして、尋ねたい。先ほどの人を救ったお主の技じゃ」
≪貴様、その名は≫
ロージェグレダムを
「貴殿は実に不可思議だ。私の想像を越えてくる。人とはかくも不思議な存在なのだな。その名、喜んで頂戴しよう」
「
「ゴドルラヴァ殿よ、手合わせ願いたい。
さすがにこの言葉には
実力差は承知している。
「貴殿には何か考えがあるのだろう。一度だけなら。手加減なしの
「それは
ゴドルラヴァが大地に転がる剣を一本拾い上げる。その切っ先は己自身に向けられている。
「見ていて気持ちのよいものではないが」
切っ先を口の中に押し込んでいく。傷もつかない。血も出ない。さすがのロージェグレダムも目を見張っている。遂には剣の全てが体内へと消えていった。
「今の私にできる最大本数をもって撃ち出そう。いざ参る」
全身が急速に圧縮されていく。ロージェグレダムのゴドルラヴァを見る目が変わった。
冷涼な
限界まで圧縮された身体は即座に伸張に転じ、炸裂音と共に一瞬にして弾けた。無数の剣がロージェグレダムめがけ射出されたのだ。
「二つ目じゃな。それでは儂に届かぬぞ」
襲い来る剣の数は五十だ。そのことごとくが大地より勢いよく立ち上がった
まさしく地中からの対空砲火だ。しかも砂礫は炎熱によって凄まじい硬度となり、ゴドルラヴァが放った五十の剣を完璧に粉砕していったのだ。
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