第182話:魔人族の戦いとその能力
「あれは
ヴェレージャの魔力網が
「
死霊の一団は動き出すと同時、六つの小集団に分離していった。何とも
"Zroodło diabła o wieryi ciejmy pomeniuz.
Nhisecz wzeytki cio jyezt ssłe.
Krew ez ciało ez dusza lgez wseyskor da zriojyła."
☆☆☆☆☆詠唱翻訳☆☆☆☆☆
魔の源偉大なる昏き炎よ
邪悪なるものここにことごとく滅せよ
血と肉と魂全てを原初へと還したまえ
☆☆☆☆☆詠唱翻訳☆☆☆☆☆
「何、この詠唱は。聞いたこともない魔術言語だわ」
ヴェレージャの
坑道の天井は低い。
ギリエンデスの詠唱は、
「あの当時から愚かさは変わらぬか。お前たちは食った者が強ければ強いほど、己自身も強くなる。だが、そうでない者をいくら食ったところで弱きままよ」
粘性液体の両腕が、それぞれ十本に分裂、鋭利な
「全く学んでおらぬ。今の我に、その程度のものが通用すると思ったか」
接触するや、鋭利なはずの
「それしきの攻撃しかできぬとは
魔術行使の準備は完璧だ。ギリエンデスの両手には
「
紫紺の炎が、まずはギリエンデスを包み込む。
繰り出された槍状腕と炎が接触した。たちまちのうちに炎の浸食が始まる。槍状腕を構成する粘性液体が瞬時に蒸発、維持できなくなった腕は
浸食はなおも止まらず、粘性液体を無毒の気体に変えながら、
「防御などしても意味はない。
ギリエンデスを包む紫紺の炎が、核の数と同数の三つに分かたれ、右の手のひらに
最初に出現した炎とは、明らかに異質だ。紫紺の炎には違いない。それが二重構造になっている。紫紺の内部に、別の色の炎が内包されているのだ。
「我が炎より逃れる
炎の浸食が進行するなか、ギリエンデスは手のひらの上に浮かぶ三つの炎に、軽く息を吹きかけた。
三つの炎が消えた。次の瞬間、
断末魔の叫びでもあった。紫紺をはぎとった、それぞれの黒炎が核を的確に
「あまりに弱すぎる。本当に
あくまで独り言だ。人族に聞かせるためのものではない。
≪そなたが生きていた時代の
脳裏に響く声にギリエンデスは、即座に
≪その必要はない。そなたが跪けば、他の者たちが
誰も彼も跪こうとする。その度にレスティーは苦笑を浮かべつつ、必要がないことを説明する。堂々巡りは終わらない。
≪
まさしく、そのとおりなのだ。ギリエンデスが戦ったこの
そもそも、
≪無理からぬことだ。そもそも、当時は
理由は至極簡単だ。
魔人族は、その成長の芽となる因子をことごとく
そして、千余年前の内戦を経て、ほぼ大半の魔人族が死に絶えてしまった。そこからだ。
より強い
位も強さも、目安にすぎない。一つだけ確実に言えるのは、今の時代の
≪我ら魔人族は何と愚かであったか。
レスティーからの言葉はない。ギリエンデスの気持ちを慮ってのことだ。
六つの死霊団も、事を終えていた。ギリエンデス以上に虐殺にも近い状態だ。
いくら
彼らの目は、
死霊には、いかなる物理攻撃も通用しない。
核に死霊の冷気の手が触れた。凍結、そして氷片となって宙に
「人族の戦士たちよ。ご理解いただけたでしょうか。我ら魔人族の力、中でも
誰も言葉を発しない。発せなかった。人族があれほど苦労する
「エルフの一属にも、我らと同じ能力を有する者が存在すると聞いたことがあります。こちらにおられる三人のエルフ属の方には受け継がれていないようですな」
ギリエンデスの問いに答えられるのは一人だけだ。ディリニッツが影から姿を現す。
「
かなり
ギリエンデスにとっては、ディリニッツの言葉で十分だったようだ。
≪レスティー様、お願いの儀がございます。厚かましいことは重々承知しております。この者に、新たに目を
これからの戦いを考えると、
≪授けるだけなら
ギリエンデスは即座に理解した。だからこその儀式ということか。千余年で随分と時代が変わっていることに改めて気づかされる。丁重に
≪坑道を抜けるまでは我らが全力で支援いたします。この者たちを死なせるわけにはまいりません≫
「承知いたしました。では、過保護かと思われるかもしれませんが、こういたしましょう」
ギリエンデスの合図を待って、死霊団の半分が最後方に陣取った。先頭には残った半分の死霊団、そしてギリエンデスが続く。人族の十名を挟む布陣だ。
「急ぎましょう」
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