第109話:レスティーと二人の創造主
剣身が揺らめき、
フィアはフィアでも、容姿はこれまでと異なる。
それが、この場におけるフィアは完全人化しているのだ。
フィアは完全
「フィア、姉上の御前とはいえ、そこまで
フィアの手を取って、
「姉上、お手数をおかけします。フィアのために椅子をご用意くださり、感謝いたします」
「構わないわ。それに、この子とは何百年ぶりになるかしら。美しさは変わらない。さらに
口元を軽く隠しながら微笑む。美の輝きとでも言うのか、後光が差しているかのような錯覚を
フィアは、恥ずかしさから顔を赤らめている。声の主からの言葉を嬉しく思いつつも、決して視線を合わせようとしない。直接目を見るなど、あまりにも畏れ多いからだ。
「ファレンフィア・メレイ・ウィデネザンテ、
フィアに言葉をかける直前、声の主はレスティーに確認の意を込めて尋ねていた。決してフィアには届かない、二人だけの
≪フィアにとって、姉上は絶対的存在です。そのような姉上を前にして、顔を上げるなど不敬極まりないと考えています。このままでは永遠に頭を下げたままでしょう≫
≪分かったわ。ふふ、可愛い弟の頼みだものね。それにしても、この子のこういうところは変わらないわね。私も、嫌いではないわよ≫
「
フィアがようやくにして顔を上げた。
「私もレスティーと同じように、貴女をフィアと呼ぶわね。真名で縛りつけるなど、
恐る恐るフィアが言葉を発する。
「私が、傍にいても、よろしいのでしょうか。そうあり続けたいと、願っております。私の存在そのものが消えてなくなる、その時まで」
声の主の表情が
「貴女が少し
少し伏し目がちな表情も、また
「残念ながら、私はここを離れられない。
口調から
「姉上、私の心は常に姉上と共に。母上様から与えられた使命を果たすまでは、必ずここに戻ってきます。姉上に会うために」
そこに突如として頭上から声が降ってきた。
「レスティー、ファレンフィア、迷惑をかけているな。いつものことだから許してやってくれ」
フィアには全く気配を感じ取れなかった。もはや条件反射か。即座に椅子から離れ、再び
「私にも不要だ。さあ、ファレンフィア、今一度座りなさい」
「フィア、兄上もあのように
気後れしているフィアがようやく立ち上がる。視線を下げたまま、着座するものの、居心地が悪くて仕方がない。
それよりも、まずは礼を述べなければならない。フィアは慌てて、その言葉を口にした。
「創造主様に、心より感謝を申し上げます」
二重の意味がある。ここにいる誰もが承知している。
「ファレンフィア、私からも頼む。これからも、レスティーの力になってやってくれ」
「いきなり出てきて何なのかしらね。せっかく、私とレスティー、二人の時間を楽しんでいたというのに。
不機嫌さを
レスティーを
「レスティー、
宙に浮かぶは、二十の武具だ。
武器は剣、槍、弓、斧がある。剣は剣でも、剣身の長さ、幅、
等しく言えるのは、複雑な文字とも模様とも判別できないものが刻まれていることだ。用途は全く分からない。いったい誰のための武具なのか。レスティーのみぞ知る、神のみぞ知るだ。
「兄上、此度は私情で無理難題を突きつけてしまい、大変申し訳ございません。さすがは兄上です。これほどまでに完璧で美しい武具は、
兄と呼ばれた主は
「次は、私ね。レスティー、何を望むのかしら」
こうして、二十の武具は完成するに至った。
それぞれが
まるで生命を
「ねえ、私の愛しのレスティー。これらをどうするつもりなの。過ぎた力は、身を滅ぼすわ。到底、人が扱えるものではないもの」
フィアの指摘はもっともだ。過ぎたる力は、人を
「その
あとはどうぞ、とばかりに手を軽く振って、もう一人に説明を委ねる。慣れてしまっているのか、引き取ったところから続ける。
「何の備えもなく、これほどに強力な武具を
他ならぬ、ラ=ファンデアを作ったのは、紛れもなく語りかけている創造主なのだ。そして、真の意味でフィアを解放できるのは、レスティーしかいない。
これら二十の武具も同様なのだ。
「レスティー以外の者が手にするには、レスティーが認めなければならない。しかも、その能力は
武器ならば、
「
またも
「そう委縮するでない。レスティーではなくて済まないが、許せ。我らにとっても、ファレンフィア、そなたは可愛い子なるぞ。
身体が熱くなっていく。触れられた部分から、何かが注ぎ込まれたかのように全身を
レスティーの目には、
「兄上、よろしかったのですか。フィアに、このような贈り物を」
「構わぬよ。可愛い弟とファレンフィアのためだ。左右一対の腕輪、
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