第117話「その呪文は即死系っ!!(特効有り」
第百十七話『その呪文は即死系っ!!(特効有り』
ワイバーンで既に捕獲されていた個体や、隣接三国経由で購入された個体は、従魔として王国各地で活躍しているが、その数は少ない。
王都の翼竜隊に居る三十頭や南方の離島に配備された数頭を除けば、高ランク冒険者や異世界人が個人で所有する従魔しか居ない。
海路によって輸入されたワイバーンは居ないようだ。
このように、メハデヒ王国内のワイバーンは少ないが、空輸での物資運搬能力は侮れない。二頭以上で駕籠を吊るせば二個分隊十名以上を高速で運ぶ事が出来る。
その中に異次元袋を持った者が居れば、戦術や戦略の幅が更に広がる。
しかし、『翼人』が輜重車としての役割を果たすのは少々厳しい。いや、兵站に関わるのは無理だろう。
翼人は妖鳥族とは違って背中に翼を有する魔族。人間の背に翼が生えた容姿と言えば分かり易いだろうか。
彼らは空を飛ぶ事が出来るが、ハーピーなどの妖鳥族より飛行速度が遅い。そして力と魔力が弱く、オツムは更に弱い。
だがしかしっ!! 自分の翼を蝋で固めた為に重さで飛べず、動けぬまま太陽に照らされ続け、熱中症で倒れ周囲に迷惑を掛けながら救急車を呼ばれるのが翼人。これぞ悲話っ!!
見る者をガッカリさせるこの切なさよっ!!
彼らもまた、ある意味『ビ・アンカ』なのだ。
あ、ちなみに、ビ・アンカと双璧を為す対義語的な言葉は『フ・ローラ』、意味は「裕福な泥棒猫」である。一途な乙女の想い人を
さらに、ビ・アンカとフ・ローラに対する反語として『デ・ボラ』と言う言葉がある。意味は「今更感」・「空気読めない売女」と言ったところか。果たして反語であるのか微妙なラインだ。
そう、デ・ボラの本質は「微妙」が的確だな!!
思いきり脱線してしまった。
今はビ・アンカな翼人について考えるのです!!
翼人を隷属化しても、力が弱過ぎて人間を運ぶ事は出来ない。彼らに異次元袋等の貴重な魔道具を持たせて空輸させるなど、負けの決まった博打、とてもじゃないが空輸は任せられない。
隷属状態であったとしても、『真っ直ぐこの地点まで飛んで行け』程度の命令では目的地に辿り着けない。
かなり詳細な命令を下さなければ、上昇も下降も障害物回避もせずに目的地を忘れて力尽きるまで飛ぶ。
放っておけないにも限度がある。やべぇよ。
レベルを上げて知力を上げれば、簡単な任務程度ならこなせるだろう。しかし、人間はわざわざ力も頭も弱い魔族のレベルを上げてまで使役しようとは考えない。
残念な事に、翼人は多くの人類にとって奴隷対象ではなく『ハンティング』の対象なので、捕獲された場合は王国貴族によって買い上げられ、翼人狩りの獲物として殺害される場合が多い。
以上が、翼人を王国の輸送業務から除外する理由だ。
むしろ軍事全般から除外出来そうな気もするが、油断は禁物。爆裂魔道具抱えての特攻命令に元気いっぱいの笑顔で応える彼らの姿が目に浮かぶ。
おっと、カスガが纏めてくれそうだ。
「王国軍は軍需物資の輸送を陸と空の両方選べる、しかし、今のところ陸運が主流か。後方支援を担う兵站、兵站業務を担う輜重兵、情報を見る限りではどちらも惰弱、兵站に至っては各種施設の建設も機関を置く様子も無い」
「辺境伯との戦いでは、辺境伯が居たテント以外に張られたテントは無い。施設と言えばあのテントだけだったな。そもそも後方支援部隊が居なかった」
「フッ、結界に護られる事に慣れた弊害か。王国軍はスーレイヤ王国との小さな戦いでも毎回同じ行動を執っている。全ての兵站業務を安全な結界内で前線にて行うという面白い行動を、な」
「豪胆ねぇ~」
「クックッ、スーレイヤはマトモな兵站が有るようだがね」
何だろうな、このモヤモヤは……
メハデヒ王国は頭がアレ過ぎじゃないかな?
「う~ん、両国のその~、軍事レベルの開きは何?」
『異世界人に関わった臣民の数と回数の差です』
「あぁ…… メハデヒは、多いんだ?」
『滅亡は時間の問題、そう考えられるほど』
「ほぅ、姉上様よ、メハデヒ王国に居る異世界人は多い、と仰せか?」
そう言って楽しそうにヴェーダへ質問するカスガ。私の左脚に体を乗せたままなのは結構ですが、触覚で乳首を責めるのはヤメテ下さい。トモエから圧が掛かるんです。耳鳴りがするんです。
『いいえ、メハデヒ王国に属する勇者は実質三人ですが、三人が三人とも困っている民衆を救う為の旅が大好きなようです』
「ぶほぁっ」
思わず噴いてしまった!!
ブホッ!! それは酷い!!
嫌がらせかな? すげぇウケるww
「面白れぇなぁ~、何だよそれ、スゲェ迷惑」
「フッハッハッハ、それは重畳、さすが勇者よ」
「辺境伯の娘婿はぁ? それどころじゃないと思うのだけどぉ」
『娘婿勇者は嫁を辺境伯領に置き、配下の女性五名を引き連れ“懲罰”の為に教国へ急行し、大聖堂に押し入り教国の聖女と面会した模様』
「そりゃぁ、何を話したか気になるな」
『大聖堂には強力な結界が張られている為、中の様子は分かりませんでしたが、30分ほどで大聖堂から出て来た娘婿勇者は、配下女性の五人に慰められながら泣いていました』
「理由を知りたいんだが……」
『大聖堂に出入りする修道女達の話によると、聖女と勇者は召喚される前の世界で面識があったようで、勇者を部屋から叩き出した聖女は
「ぶっほぁぁぁぁ!!」
「どうしたナオキ?」
「どうしたのぉ~?」
今日のヴェーダは、なかなかブッ込んでくるぜぇ……!!
『勇者は既に帰国していますが、辺境伯の娘を連れずに南へ向かい、海岸沿いに大邸宅を購入。その後、前述の配下五人と共に邸宅へ引きこもりました』
「う、う~ん、そっか。とにかく、メハデヒ王国の兵站事情はある程度把握出来たな。今後も目を皿にして調査を続けよう」
「ナオキ、『キンモー』とは何だ?」
「何だか嫌な言葉ねぇ」
「ま、まぁ、呪殺の類いだな。唱え続けられると、死ぬ」
「なんと……」
「ヤダ怖い……」
そう、恐ろしい呪術なのだよ……
さ~って、次は熟練度の話か。
ついでにコアの話も一緒に出来るかな?
ってか、アートマン様は教国人のお祈りでもお力を取り戻せるの?
『純粋なアートマン信仰ではないので効率は悪いですね、アートマンは気にしていませんが。そもそも愛神への祈祷に穢れが多いので、得た信仰心は神域の修復や拡張に回しています』
そっかぁ、まぁそうだよあなぁ。
アートマン様を思い浮かべて祈るのと同じなわけねぇよな!!
美女とクソを比較すんなって話だなっ!! あふぅん。
あーりがとう御座いますっ!!
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