第35話 精神世界。
どうして!?
って、ノワ、なんで? どうして? どうやってあたしの
——んー? なんとなく。出れたんだから入れるかなって?
えー?
そんなの。
だって、だよ?
普通他人の
それとも、あたしの心ってガバガバなの!?
ああそれもちょっと嫌。
ああ、ううん、ノワがあたしの中に入ってくるのが嫌とかそういうわけじゃないんだよ?
だってそうでしょう?
普通、他の人に自分の心の中に勝手に入ってこられたらおかしいって、そう思うもの。
あう、ノワが入ってくるのがイヤなんじゃ、ないけど?
(ここ大事。ノワを拒否してるわけじゃ、ないの)
——ああ、ごめん。でもきっと俺は特別なんだと思う。何度も君のレイスに触れているうちに、きっと少しだけ君のレイスが溶けてちょこっとだけ混ざったみたいな?
えーー〜?
そんなの!?
——だから、これは本当にごめん。俺、少しだけ君の記憶も見えたりしたんだ。ああ、全部じゃないよ? ほんの少しだけ。
カーーーーっ
あたしの顔が真っ赤になるのがわかる。
はうあう、心臓の鼓動が激しくなって止まらない。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。
だってだってだって、そんなの!
——ほんとごめん。でも、そのおかげで君が俺のこと本当に好きでいてくれたのもわかって。すごく嬉しかった。
ああ、ああ、ああ。
ほんわかした心の温かさが伝わってくる。
あたしの中にいて、多分少し繋がってる?
レイス同士がほんのちょこっとだけど、赤い糸みたいなので繋がった。そんな気がして。
ありがとう。ノワ。
あたし、なんだか少し、元気が出た。
きっと。
あたしという存在の境界と、ノワという存在の境界はまだちゃんとある。
でも。
そこにほんの少しだけの糸みたいなもので、優しく繋がっている。
そんな幸せ。
ありがとう、ノワ。
あたし、頑張れそうだ。
——君はもうそれだから。俺は、君が一人じゃないよって、俺もついてるって、そう言いたくてここまできたんだよ? 一人で頑張るんじゃない、一緒に頑張ろ? 絶対に君は俺が守るから。
あうあう。
あたしの心はいっぱいいっぱいに膨らんで。
うん、これは、マナ?
ううん、これは、あたしの幸福の、気持ち。
ノワを大好きだって思う感情。
幸せだって思える、そんな感情の塊が、あたしの
清浄な金色のそんな粒子があたしのゲートから溢れる。
ああ。あたし。
身体中から力がみなぎる。
もう、なんでもできそうな万能感に満たされて。
あたしは悪魔レヒトに向けて飛んだ。
空間を泳ぎ、縫って、何枚もの膜のようなものを抜けたその先に。
奴がいた。
「はは。ここまでくるとはな。やはりお前、人ではないな」
真っ赤なその口が開き、そう音が漏れた。
「人じゃないってどういうことよ! それに、あんたこそ、ほんと何なの!?」
あたしは我慢できなくてそう言い返してた。
ノワのおかげ? 前に感じていた何ともいえない恐怖はだいぶ薄れている感じ。
こんな場所、通常の空間、ブレーンよりも2枚も3枚も上、そんな普通じゃ多分辿り着けない場所にいる相手と対峙しても、何とか普通に答えられてる。
「ふっ。ここに、この場所に辿り着けるというだけで普通の人では無いと証明されたような物だ。ここは神の住まう場所に一番近い、そういった真那の地だからな」
はう? 何?
だって、ここからだって地上の様子は全て見えている。
地面に倒れ伏したソユーズ、サイレン、ラプラスの姿だってちゃんとわかるのに。
例えるなら、三次元から二次元に干渉できるように、四次元の世界から三次元の世界に干渉できるように、そういったものとちょっと似ている。
でも。
実は精霊であるギアたちは普段通常の空間とは違う高次の空間に隠れている。
そういった空間の次元というものはあくまで物質としての物理法則に準じているのだ。
人の認知が及ばなくとも、あくまでも、あれはちゃんとした物質世界の存在だから。
でもここは。
多分、違うの?
そう、物質世界というよりも、
あたしは自分の手を振ってみる。
空気をつかむように?
でも、普通だったら感じることができるはずの空気抵抗を感じない。
空気の流れも、起きなかった。
「理解したか? ここは物質が関与する場所ではないことを」
あ、あ、あ。
だから、なんだ。
魔法の攻撃なんてものでもあくまでも物質世界の物理法則に干渉してる攻撃は、こいつには全く意味をなさないんだって。
例えばあたしが今、ドラゴンの盾を砲塔に見立てて最大魔法
0と1、空間より素粒子を産み出しそれを加速し放つそれ。
要は反物質粒子加速砲とでもいうべきドラゴンノバは、物質世界であれば多分あたしの攻撃魔法としては最強の部類になる。
最大出力で放てば月も砕けるマンガのようなそんな設定の技だ。
(そんな出力では決して使わないけどね?)
世界をも滅ぼせるというそんな能力、そんな力。
最終兵器のようなそんな存在として設定されていたチートなあたし、マキナ。
それでも。
そんな技、攻撃、この場所では通じない。
やってみなきゃわからない?
ううん、ここからの攻撃は地上の世界に影響を及ぼす可能性がある。
で、あれば。
そんな危険なこと、そうそう迂闊にはできないよ。
「お前、自分が今どういう状況にいるのか気がついているのか?」
はい?
「ふふ、やはり面白いな。どうだ、再度聞こう。お前、魔にならないか? 歓迎するぞ?」
唇の端をぎゅっと上げて、レヒトはこちらに手を差し伸べた。
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