罷免
「焦れったいのぉ、そろそろ切り札を使うか」
ティベリウスの鶴の一声、帝国軍はこの戦闘に備えて持ち込んだ攻城兵器の用意を開始した。
帝国軍が持ち出したのは、車をつけたことによって移動が容易に可能になった攻城兵器、
「手始めは、総鉄製の矢から放つぞ!」
大盾を用いた堅牢なプロテスタリー歩兵による陣形を崩すべくそれは、最前列へと据えられる。
「なっ……」
「あれは……!?」
その正体を知る将兵達はどよめいた。
「あれは法皇が禁じたものでは無かったか!?」
あまりにも犠牲が増えたことにより時の法皇が使用を禁止した武器、それが
「そうじゃ、これは禁じられた武器よ」
プロテスタリー将兵達のどよめきが聞こえてか聞こえずか、ティベリウスは不敵な笑みを浮かべた。
「人への使用はな?お主らには法皇の禁じは適用されぬのよ」
薄汚いユグノー共が、とせせら笑った。
「用意出来次第、各個にて撃て。これは聖戦ぞ!」
正義は我にあり、カトリコス派の全権代理者はまるで自分であるかのようにティベリウスは命令を下した。
ばねの力を借りて放たれた総鉄製の矢は、大盾にぶち当たるとそれを粉砕し内側の兵士達を文字通り粉砕した。
「あぁ……足がっ……!」
もろに矢を食らった足はもはや、体と繋がってはいない。
それだけの威力があった。
「早くしてくれよ、アルデュイナの化身……ッ!」
前線で歩兵の指揮を執るコリニー将軍は祈るような目で空を睨んだ。
◆❖◇◇❖◆
「どうにか戦闘前にここに来れたか……」
ティベリウスにより罷免された将軍バドリオは、戦場を見渡せる丘の上に来ていた。
離れた丘の上にいる彼の元にまで届く無数の破裂音。
戦闘は既に始まっていた。
街の南面で向き合う両軍は、アルフォンス・ヴァロワ・プロテスタリー勢力の連合軍がやや浮き足だっていた。
帝国軍の最前列にはいくつかの
「戦況は我が方が優勢か ……」
バドリオはホッと安堵の息を吐いた。
だが彼は視界の端に帝国軍の優勢を覆す存在を捉えてしまった。
それは戦場を避けるように、或いは隠れて近づくように移動する騎兵の一団だった。
「いつの間に!?」
帝国軍はその左右から騎兵に挟撃される形にあることにバドリオは気付いた。
しかし帝国軍はその存在に気付かない。
それもそのはず、通常周囲にいくつも放っているはずの物見隊はノエル達によって抹殺されていた。
「いない!?」
物見隊の姿がどこにもないことにバドリオは気付く。
何をやっているのかと忸怩たる思いに駆られたが今更バドリオに出来ることなどなかった。
ロアール川の作り出した段丘に姿を隠すかのように進んでいた騎兵達はその進路を東へと変えた。
そして横隊へと隊形を変形させると、薄らと積もった雪を踏み締めた。
彼らは前方に陣取る帝国軍の横腹に突き立つ槍の如く駆け出した―――――。
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