共闘
「オルレアンの街には既にヴァロワとアルフォンスの両軍が入っていました!」
夕刻を迎える前、バドリオは斥候部隊を出し偵察を行っていた。
五つ放った斥候のうち帰って来たのは僅かに一つ。
他はもれなく亡骸へと変わり果てた。
「して数は?」
「街の外から見る他、ありませんでしたので判断はしかねます。しかしながら、同胞たるカトリコス勢力の部隊は既に壊滅したとみて間違いないかと」
「そうか……」
二万の軍隊が揃うという目算は、帝国軍がオルレアンに入るより前に潰えた。
「このこと、皇帝陛下に伝え今一度、撤収を具申いたそう」
堅実なやり方を好むバドリオは、数的有利を活かせなくなったこと、そしてヴァロワ及びアルフォンスと戦争になることのリスクを考えヴァロワの地から撤退したいと考えていた。
「――――というわけでして、どうかご再考賜りたく」
「ならん」
ティベリウスは、バドリオの申し出を一蹴した。
「アルフォンスの若造と中途半端な数のヴァロワ軍が雁首を揃えているのだ、これを今討たずしていつ討つというのじゃ?」
「いや、しかし相手はあのアルフォンス公なのですよ!?」
「よもや臆したか、バドリオ」
「決してそのようなことではありません!ですが―――――」
「もうよい、お主は罷免しよう」
バドリオの言葉にティベリウスが耳を貸すことはなかった。
それどころか罷免を言い渡した。
「今まで御苦労じゃった」
ティベリウスがにべもなくそう言い渡すと
「お言葉に甘えて私は休ませていただきます」
バドリオは潔くこれを受け入れた。
ティベリウスに対して一礼するとバドリオは帝国軍の陣を去った。
この男、この後にカロリングを改革していくにあたり重要な役割を果たしていくのだがそれはまた別の話――――。
◆❖◇◇❖◆
「出来れば第一撃は無効から撃たせたい」
オルレアン大聖堂に集まったのは、ヴェルナールにアレクシア、コンデ公とコリニー将軍と言ったような部隊を率いる主要な面々だった。
「初めに言っておくが、我々国軍としてはプロテスタリーとカトリコスの対立を容認するつもりもなければ、どちらか一派閥を依怙贔屓するつもりもない」
アレクシアはキッパリと告げた。
その言葉にコンデ公とコリニー将軍はムッとした表情を浮かべる。
「御二方、我々としては可能な限り迅速にヴァロワの平穏を取り戻したいのですよ」
ヴェルナールが二人を宥めるように言った。
「平和を乱すのはカトリコス連中の所業、我らを彼らと同一視するのは気に入りませんなぁ」
コンデ公は不満をあらわにするがヴェルナールは笑って応じた。
「我々の目指すものと
言外にセルジュの意向に逆らうような行為は行うなと釘をさす。
「では、そろそろ本題に移ろう」
カトリコス勢力の指導者たる二人には有無も言わさずアレクシアは切り出した。
コンデ公もコリニー将軍もここでアレクシアやヴェルナールに見捨てられれば、カロリング帝国軍に蹂躙されることは目に見えているので、それ以上は何も言わなかった。
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