第82話 解決策

 「エレオノーラ、この戦争でお前の国が抱える課題はなんだ?」

 

 昨日丸一晩かけて打開策をノエルと共に練った俺は、エレオノーラに相談することにした。

 俺は、あくまでも他国の人間だ。

 このカロリングで如何に戦局打開についての策を持っていたとしても俺の指示に聞く耳を持つ人間の数などたかが知れている。

 俺の策を実現するには、影響力を持った人間の力が欲しいのだ。

 それ故に、皇族であり親友(?)のエレオノーラに相談することにした。


 「それは、主力部隊が孤立無援の状態にあることじゃな」

 

 南側と北側にわかれてオストラルキ大公国へと逆侵攻するカロリング帝国陣営の部隊のうち南側の主力三万は、敵部隊による主力部隊後方への上陸により、攻略した山岳地帯を敵に奪取され盆地へ閉じ込められていた。

 それを救援するためには再度山岳地帯を確保するために援軍を出すという話になるのだが、そうなったとき別の問題が浮上してくる。


 「他には?」

 「そうじゃなぁ、陣営に所属する国が離反し始めていることもあげられるのぉ」


 カロリング帝国陣営に所属する各国は、レパントの海戦でカロリング帝国海軍が敗北を喫すると次々に離反し始めていた。 

 中には、どういうわけかカロリング帝国海軍敗北の報せが届くよりも早く海戦直後に離反した国もあったぐらいだ。

 それらの国にイリュリア大同盟の調略の手が伸びていたことは、想像にかたくない。


 「それとだ一つ教えておくと、レパントの海戦でカロリングが敗北した相手は、オットマン帝国だ」


 これは、カロリングの抱える問題を解決するために最も使える材料とも言える。

 災い転じて福となす、というわけではないが、カロリング最大のピンチであるオットマン帝国の介入は、カロリングにとって問題打開の糸口だった。


 「なんじゃと?これは早う軍部の連中に伝えねばならんっ!」

 

 踵を返して走り出そうとしたエレオノーラの首根っこを掴む。


 「待て待て、俺の話はこれで終わりじゃない」

 「これ以上に大事なことがあるのかの?」

 「まぁ聞け。求心力を失いつつある状況に加えて、オットマンの連中が現れた。これで一つ俺たちにきれるカードが出来たわけだ」

 「……もしや……そういう事か!お主を選帝侯に抜擢したのは正解だったようじゃの!」


 エレオノーラは、俺の通っていたカロリング帝国の士官学校では、成績上位だった。

 さすがにそれだけあって頭は良いし察しもいい。

 断片的な方程式を示しただけで解を導いてみせた。


 「早速、選帝侯会議を招集するのじゃっ!」


 ◆◇◆◇


 ――ヘルヴェティア共和国首都

        ミッテルラント市―――


 「それでは、只今より選帝侯会議を開催致します」


 ミトラ教の最高位である法皇の代参として主要人物であるエクレジア枢機卿を交える形で選帝侯会議が始まったのだった。

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