第25話 会議2
「アルフォンス公国はどうするのか、ユトランド評議会陣営に
俺から望んで加盟したいわけじゃない。
アルフォンス公国の加盟について議論の余地あり、そう思わせるのが俺の目的だ。
「この場に来ておいてそのような!」
「その発言の意味、おわかりですか?」
ヴィレム王とスキョルがいきり立つ。
「えぇ、ですからこの場に私が参加した、それが現状我が国が示せる最大の誠意です」
アルフォンス公国は、エレオノーラの外遊により事実上、帝国に独立を承認される形となった。
最初の独立承認国、この意味はかなり大きい。
独立前に所属していた国家を敵に回すことを厭わないという意味を持つからだ。
「アルフォンス公国の置かれた立場を考えれば仕方のないことであろうよ」
そこにボードゥヴァンが口を挟んだ。
ナイスタイミングだ。
「ボードゥヴァン王の言う通りでして、ユトランド評議会陣営に加盟すると明言すれば、エルンシュタットのみでなく帝国まで敵に回す形となります」
「帝国など、ユトランド評議会の同盟軍をもってすれば簡単に押し潰して――――」
ヴィレムがそう言うと、ヴァルティスラフが遮った。
「ノルデン主義連合を忘れてはおるまいな?」
「なっ……通行権を渡している分際でよくもっ!」
ヴィレムが罵るが、ヴァルティスラフは何処吹く風と言った具合に受け流す。
「通行権の譲渡を撤回すれば攻められるのは我が国。そうなった時に如何程の軍勢で支援してくれるので?」
ノルデン主義連合の動員兵力は三万を超す。
それに抗しうる兵力をなんの見返りもなく出せるはずがない。
「つまりはこういうことなのだ、ヴィレム王。アルフォンス公は是非ともユトランド評議会に引き入れたい人物である。が、それは同時に帝国との問題を招きかねない。今しばらくの間、アルフォンス公の陣営加盟を見送っては如何かな?」
諭すような口調でボードゥヴァンがヴィレムに言うと、ヴィレムも黙った。
だがここに来てようやく、俺はボードゥヴァンが俺に協力した目的を察した。
ボードゥヴァン……もしや、俺と戦争をする気か!?
俺がユトランド評議会に加盟しなければ、大手を振ってアルフォンス公国を潰すための軍隊を出せる。
今すぐに戦争、という事態になったとして俺の用意した仕掛けは間に合うかわからない。
ボードゥヴァンが何事かをヴィレムに耳打ちした。
マズイ……これは非常にマズイ。
ボードゥヴァンはヴィレムとともに出兵するつもりだ。
「ボードゥヴァン王が説明したような状況にありますので、今後は我が国を加盟国としてでは無く、帝国との窓口として活用してみてはいかがでしょうか?」
何としてもここで存在価値を証明しなければ……!
「だが帝国は、聞くところによると我が国の湊に目を付けているらしい。そんな国に果たして話が通じるかね?」
ヴィレムがボードゥヴァンの路線に同調する。
そんな噂、うちの諜報網にも引っかかってない。
「無論、交渉の余地はないだろうな」
このままでは、反帝国で評議会内の意見が押されてしまう。
そうなれば、ここに帝国と繋がりを持つ俺の居場所は無い。
なら、今すぐに帰国して備えるしかないか。
だがそれには帰国する理由が欲しい。
何か帰国する理由はないか……?
そう考え始めたときだった。
「失礼します」
ノエルが息を切らして、俺の元へと駆け込んできた。
「どうした?」
「そ、それがエルンシュタットとの国境に王国軍が出現したというのです!」
ノエルが周囲に聞こえるようわざとらしくと告げた。
これだ……!
用意した仕掛けの一つがようやく作動した瞬間だった。
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