第24話 会議

 「それでは、参加者が全て揃いましたので記念すべき第一回ユトランド評議会会議の開催をここに宣言いたします」


 長机に一斉に会した八人がグラスを握る。


 「ユトランド評議会の繁栄に、乾杯!」

 「「「乾杯」」」


 開催国となったダンマルク王国宰相のスキョルが音頭をとってグラスを掲げた。

 そして一斉にグラスに口をつけた。

 胸襟を開いて語り合い会議を実りあるものにしよう、ということらしい。

 参加者は以下の通りだ。

 ・ダンマルク王国国王アガンチュール

 ・ダンマルク王国宰相スキョル

 ・ホランド王国国王ヴィレム

 ・ベルジク王国国王ボードゥヴァン

 ・ポメラニア公ヴァルティスラフ

 ・北プロシャ選帝侯ラウエンブルク

 ・ハンゼ都市同盟代表オルデリクス


 そしてアルフォンス大公国の公王である俺が加わるわけだ。

 参加国には曰く付きの国も見受けられる。

 ポメラニア公がそのいい例だ。

 ポメラニア公国の先代の公王はユトランド評議会と対立するノルデン主義連合のスヴェーア王国に協力する姿勢を見せていた。

 他にもハンゼ都市同盟の構成都市の中には大陸の主流宗教であるミスラス教を援助するカロリング帝国寄りの立場の都市もある。

 ユトランド評議会が一枚岩になれないことは容易に想像がつくだろう。


 「しかしながらポメラニア公に参加していただけるとは思いもしませんでした」

 「先代は先代、私は私だ」


 ヴァルティスラフは、スヴェーアと戦争を続けてきたダンマルク王国宰相の嫌味とも取れる言葉をさらりと流す。

 だがこの男がユトランド評議会に協力的かどうかといえばそんなことは無い。

 公国うちの諜報網の調査によれば、依然としてスヴェーアに通行権を与えているらしい。


 「それはそうだな、ヴァルティスラフ公が参加しているのであればノルデンの連中に対しての牽制にもなろう」

 

 アガンチュールが親しみを込めた微笑みをヴァルティスラフに向ける。

 言わば火薬庫とも言える存在を抱えるユトランド評議会の最初の会議を、台無しにしないために場を和ませているのだろう。


 「して、アルフォンス公もおるではないか。三倍の敵を打ち破ったという話は、このアガンチュールの元まで届いておるぞ!」

 

 主催国の国王の発言で全員の注意が俺に向いた。


 「恐縮です。ですが、時の運があっただけかと」

 「このような若者が跡取りだったら未練なくすぐにでも死ねますな」


 野心家のボードゥヴァンが思ってもないことを言って俺の評価を持ち上げる。


 「はは、野心家と名高いボードゥヴァン王までもがそう申すか」


 アガンチュールがそう言って笑うと、他の参加者達もつられて笑った。

 野心家が心にもないことを言っているよ、という笑いだろう。

 

 「では、場も和んだところで早速本題に移りましょう」


 頃合を見計らってスキョルが話題を切り出した。

 そこから延々とユトランド評議会陣営としての今後の外交方針や軍事演習、防共計画の話しが続いた。

 そして会議もひと段落と言ったところでヴィレムが一石を投じた。


 「一つ気になることがあるのだが、聞くところによると先日、皇族がアルフォンス公の元に外遊しに来たそうだが……帝国陣営とユトランド評議会、アルフォンス公はどちらを選ぶのだろうか?」


 アガンチュール王が俺の評判を語った際と打って変わって懐疑的な、或いは心胆を見抜くような視線が集まった。

 頼むぞ?という視線をボードゥヴァンに送ると、俺は口を開いた。

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