絶望の聖魔法999999
「いやー、懐かしいですねライトさん! ライトさんなんだかめちゃくちゃ落ち込んでたからもう会えない気がしてましたよ! やめてくださいよ、追放されたからってそんな陰気な顔してるの!」
勝手に追放した身でめちゃくちゃ言ってくるマリアに、職場選びのミスを本気で後悔し始めてきた。いっそ今からでも辞退させてもらうか? 逆にこいつがいるならそれを理由に去る事もできるだろう、僕を追放してきた元パーティメンバーなのだから。
「あ、そうだ。それでライトさんは
機先を制す形でマリアに聞かれ、辞退の言葉がぐっと喉に詰まる。医者と助手は質問の意味がわからず疑問符を浮かべている。
「ライトさん
核心を突くマリアの指摘。そう、僕は本来回復魔法なんて使えない。たとえノウィンの村人が僕の魔法事情についてよく覚えていなかったとしても、元パーティメンバーのマリア達だけは決して誤魔化す事ができない。
「つ、使えるようになりました」
とにかく使えるようになったんだから、そう言うしかない。そして案の定マリアは怪訝そうな顔をする。
「ええ~そんな事あります? だって魔法なんて生まれつきの才能が全てですし、最初に使えなかったのが使えるようになんてある訳ないじゃないですかあ。ずっと練習して使えたのは炎魔法だけだったって言ってましたよね? 今使えるなら冒険者時代も使えてるはずじゃないですか、ほんの三週間前ですよ~」
ぐっ……! この女……! 雇い主の前で明け透けに物を言いやがって……!
「いやほんとに使えるようになってさ……」
「じゃあ見せてくださいよー! それきっと回復魔法じゃないですよ、なにか別のやつですよ! 絶対そんなの使える訳ないんですよライトさんがー!」
うるさいな、僕はほんとに回復魔法が使えるようになったんだよ!
て、いや違う、使えるようになってるから問題なんだ……。どうしよう、このままだと僕が回復魔法を使える事が迅速かつスムーズに証明されてしまう……。これでは言い訳を考える暇すら……。
「ちょっと待ちたまえ! 貴重な回復魔法をテストで消費するのは駄目だ! これから客が来たらそいつでテストしようじゃないか!」
職業倫理の欠片も無いような事を言い出すノーマン先生。そのザルな倫理観のせいでこの場の追及は逃れられそうなので、とりあえず客が来るまで言い訳を考えよう。
「絶対回復魔法じゃないと思いますけどねえ……まあいいや、ほらライトさん行きますよ」
ぶつぶつと言いながら奥の部屋へと僕を手招きするマリア。そういえばマリアだけ別室にいたようだったが、これからその別室で二人きりで待機するって事なのか? 言い訳を考える以前に追及をかわすのすら難しそうで、本格的に頭が重くなるのを感じた。
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