第80話 ギルドへ報告しに向かうガイ
「お前はネロの側にいなくて良かったのかよ」
「余計なお世話よ。大体私はあんたのパーティーの一員なんだから。報告に行くというなら一緒にいくわよ」
ガイに問われフィアが答えた。
「チッ、そういうところは無駄に真面目だな。そんなんだから損するんだぞ」
「あんたみたいに素直になれないタイプよりは上手く生きてるつもりよ」
「はぁ? 俺のどこが捻くれてるってんだ!」
「ガイ、フィアはそこまでは言ってませんよ」
ため息交じりにセレナが伝える。ガイは面白く無さそうな顔を見せぶつぶつと呟いていた。セレナとフィアは苦笑しながらもガイについていき三人で冒険者ギルドに向かった。
ギルドに入るとフルールも含めて職員総出で慌ただしそうにしていた。やはり黒い紋章持ちが現れた事件もあって対応に追われているのだろう。
通常業務も併用してこなす必要があり中には泊まり込みで職務をこなしいている職員もいる状況である。
「仕方ねぇ。このままマスターの部屋行くぞ」
「え? いいの?」
「こっちだって報告するよう言われてるんだ。問題ねぇだろう」
「相変わらず強引ですね」
セレナが肩を竦めるが、ギルドの職員が忙しそうなのも確かなのでガイと一緒に二階へ向かった。
「おう、邪魔するぞ」
「ちょ、せめてノックぐらいしなさいってば!」
フィアに注意されるも関係なしにガイがズカズカとギルドマスターの部屋に入っていく。
「何だ貴様らは? 失礼だろう!」
「あん?」
部屋に入ると机にはサンダースと来客の姿があった。ガイ達から見て机を挟んだ手前側には鎧姿の二人がいて銀髪の若い男が振り返りガイに文句を言ってきた。
不機嫌そうに眉を顰めるガイ。ジロジロと文句を言ってきた男を見ると鎧には王国の紋章が刻まれていた。
「チッ、何で騎士連中がいんだよ」
ガイが不満そうに頭を擦る。その態度に若い銀髪の騎士が怒りを顕にする。
「我ら王国騎士団に向けて何だその失礼な態度は!」
「落ち着けバエル。冒険者に礼節を求めることがそもそも間違いなのだからな」
「おいおっさん。この連中はあれか? 俺らに喧嘩売ってるのか?」
「やめとけ馬鹿。今回の件もあってサジェス砦からやってきた王国騎士様だ。そちらが第八騎士団所属の団長グラン。若い方はバエルだ。で、こっちが勇者パーティーとして活動しているガイ、セレナ、フィアの三人だ」
サンダースがガイ達に騎士の二人を騎士にはガイ達を紹介した。ガイはフンッと鼻を鳴らし不遜な態度を貫いている。
「ほう。貴方達があの勇者パーティーですか。これはこれはどうぞ宜しく」
グランが笑みを浮かべて挨拶した。しかしその目は全く笑っていない。
「砦からここまでご苦労なことね」
「ハハッ。この領地は我らの管轄ですから当然のことですよ」
騎士とは基本王国に所属する王国騎士のことを指す。王国の各所には砦が設けられ王国軍所属の騎士や正規兵が配属され管轄の領地で問題が起きた際などには出動する形を取っている。
なお領内の各町などに所属する衛兵などは領主が予算を組み雇う私兵となる。
「勇者パーティね。巷では随分と無能を晒してるようではないか。そんな連中が勇者とは片原痛い」
「テメェ、やっぱり喧嘩売ってやがるのか」
バエルが目を眇め小馬鹿にするように口にするとガイが眉をひくつかせ若い騎士に噛みついた。
「失礼だぞバエル。彼らだって今回はそれなりに活躍したそうではないか」
「それなりとは随分な言いぐさね」
バエルに態度を改めるように伝えるグランだが、そういった彼自身もどこか下に見ているような言い草でありフィアもセレナも不満を顕にしていた。
「グラン卿。今回の件は彼らの活躍があったからこそ被害を最小限に抑えられたと思っている。そこは考慮して欲しいところですな」
「ふむ。確かに町にみすみす潜入された上、奴らにいいように暴れられあまつさえみすみす罠にハマり暴走したどこぞのギルドマスターよりはマシですかな」
底意地の悪そうな笑みを浮かべグランが語る。その態度にガイの表情は益々険しくなった――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます