第79話 目覚めた場所
う、う~ん――何だか頭が重い。体を起こして頭を振った。えっと、そういえばセレナに魔力水を直接与えたら頭がくらくらして、そのまま気絶しちゃったのかな?
「スピィ~!」
「あ! スイム? て、ベットの上?」
どうやら僕はどこかに運ばれてベットに寝かされていたようだ。スイムは枕の横で僕を見守ってくれていたみたい。
「スピッ! スピィ~!」
ベッドから体を起こした僕の胸にスイムが飛びついて来てプルプルと震えた。僕が目を覚ましたのを見て喜んでくれているようだね。
何だか心配かけちゃったのかも。
スイムの頭を撫でてあげているとがチャッと正面の扉が開いてエクレアが姿を見せた。
「エクレア良かった無事だったんだね!」
「ネロ! それはこっちのセリフだよ! セレナが魔法で治療してくれたけど、気がついたら逆にネロが倒れてるんだもん!」
エクレアが近づいてきて大丈夫? と顔を覗き込んで来た。凄く近いです……な、何か凄く顔が熱くなってきた。
「顔赤いよ大丈夫?」
「だ、大丈夫。それより僕どれぐらい寝ていたの?」
「えっとね。一昨日の夜倒れて今はもうお昼になるところだよ」
ということは倒れてから丸一日眠ってしまっていたわけだね。
「ネロ――目が覚めたのですね」
「良かったぁもう心配したんだからね!」
「チッ、だからお前は駄目なんだよ! 面倒かけやがって!」
今度はセレナとフィアとガイが入ってきた。フィアは僕を見て良かったと旨を撫で下ろしていた。
セレナも微笑みかけてくれているけどガイはいつもどおりで何だか逆に安心しちゃったよ。
「――フィアも心配してたみたいだしな。テメェは自分がひ弱だって自覚しやがれ!」
「えぇ! で、でもこれでも少しはたくましくなったかなって」
「どこがだボケナスが! テメェは魔法系だろうが! 肉体的には俺に劣るんだからな! よく覚えておけ阿呆が!」
「あ、はい――」
流石にガイを引き合いに出されると……肉体的な強靭さだと僕はやっぱり見劣りする。
「ま、その為に私がいるようなものだけどね。ネロは私が守るんだから!」
「いや、参ったなあはは……」
「女に守る言われてヘラヘラ笑ってんじゃねぇ!」
また怒鳴られた……何かガイには怒られてばっかだよ。
「スピィ?」
「え? うん。勿論スイムも頼りにしてるよ」
「スピィ~♪」
スイムが僕の肩に戻ってきてすり寄ってきた。本当甘えん坊さんだね。
「はは、どうやら元気になったようだね」
「あ、神父様!」
部屋に神父様が顔を見せた。それでようやくわかった。ここって教会に備わった部屋のベッドなんだね。
「神父様、無理を言って申し訳ありませんでした」
するとセレナが神父様にお礼を言っていた。そうかセレナが頼んでくれたんだね。セレナは生属性の紋章持ちだから教会には顔が効くのかもしれない。
「いえいえ。ネロにはいつも水を提供してもらったりとお世話になっているし何よりセレナ様のお願いとあってはね」
「うん?」
神父様の呼び方が少し気になった。様付け?
「神父様! 私のことはどうか普通に……」
「あっと。そういえばそうだったね。うっかりしていたよ」
セレナに言われ神父様が手を口に持っていきハッとした顔を見せた。
セレナは属性的に教会に顔が利くのかと思ったけどそれだけじゃないのかな?
そういえば――僕はしばらくガイ達とパーティーを組んでいたけどガイ達の素性とかは知らないんだよね。
ガイ達は家名について話したく無さそうだったし僕自身が似たような物だったから深くは踏み込まなかったんだ。
「とにかく元気になってよかった。とは言え魔力枯渇は一見良くなったようにみえても実際は回復しきれていないことも多い。特にネロは元の魔力が多いようだからね。今日一日はここにいていいからゆっくり休むといいだろう」
「え、でも迷惑じゃ?」
「神父がいいって言ってんだから大人しくしたがってろや! 殺すぞ!」
「えぇ!」
元気になってすぐに殺すとか勘弁して欲しいよぉ~。
「でもギルドの報告とか」
「チッ、面倒だがそっちは俺らでやっておいてやる」
「そういうことならネロも大人しくしておこう? それにパパもね。今日は安静にさせておけって言ってたの。だから急ぐ必要ないからね」
「え? そうなんだ……マスターにも気を遣わせちゃったかな……」
「だからそういう心配が不要ってことでしょう。たく、ネロは真面目過ぎなんだから。ガイの言ってるように後の事は私達に任せておきなさい」
「そうですよ。ゆっくり今は体を休めて」
「……みんな。うん。ありがとう。でも皆こそ大丈夫? あれだけの戦いだったわけだし」
「ざけんな! 俺はテメェみたいにひ弱じゃねぇんだよ! 殺すぞ!」
「えぇ!」
何か胸ぐら掴まれて怒鳴られたよ!
「チッ。これ以上お前と話してても調子狂うからな。行くぞ」
「はい」
ガイが二人を促した。セレナが答えガイも背中を見せる。
「ガイ――今回はありがとう。一緒に戦えて何かパーティーを組んでた頃をちょっと思い出したよ。と言っても前は僕戦闘では役に立ってなかったけどね」
「勘違いしてんじゃねぇぞ!」
僕がお礼を言うとガイが声を荒らげて顔だけで振り返った。
「今回は仕方なく組んでやっただけだ。馴れ合いはごめんだからな」
「あ、ごめん……」
確かに一度は追放された僕に言われても迷惑なだけだよね……。
「それとだ……テメェはもう禄に戦えねぇような腑抜けじゃねぇ。ちっとはマシになった。本当に少しだけな! だから……さっさと調子を取り戻しやがれ。昇格試験の時に体調不良で出れませんなんて格好つかねぇんだからな!」
それだけ言い残してガイとセレナが先ず部屋を出た。昇格試験……そういえばCランク試験の話があったよね。
「それじゃあ……私も行くね。エクレア、そのネロを頼んだわよ! 何か目をはなすとすぐ無茶しちゃうんだから」
「あ、うん」
「はは。じゃあね」
「フィア! また、話そうね。食事も一緒にしたいし私、もっと貴女と話したい!」
「――ありがとうエクレア。勿論だよ私もエクレアと仲良くしたいもの。じゃあネロもしっかり体休めなさいね!」
そしてフィアもガイ達の後を追っかけていった。
何か皆に心配されちゃったね。こうなったら僕もしっかり体を休めないとね――
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