第73話 スイムから得られた事

 スイムにはどうやら雷が通じないようだ。そのおかげでサンダースが放った電撃を受けてもケロッとしていた。


 そしてそれには当然理由がある筈だ。前にライアーの電撃を受けても平気だったけどあれはスイムが純粋だから嘘が通じなかったのかな? とも思っていた。ただそれにしてはライアーの驚きようが謎だったわけだけどね。

 

 待てよ純粋――スイムはどこか他のスライムと違う。そもそも最初に出会ったときにも水と一緒に現れた。


 スイムの体は綺麗で透き通るようなそうまるで一切汚れのない水のようでもあり――汚れない水。純粋なみ、ず?


「ネロあぶねぇ!」


 ガイの声が耳に届く。しまったつい物思いに耽ってしまって周りが見えてなかった。サンダースが虎になって僕に襲いかかる。


 以前試験で見た技だ! 事前に魔法で防御力は上げてるけど、今のサンダースは雷を纏っている。まともに喰らったら水を纏っている今は逆に不味いし前みたいに反撃する余裕はない。どうする、いや僕には一つの考えたあった。


「閃いた! 水魔法・純水ノ庇護!」


 僕が魔法を唱え効果が発生するのとサンダースの突撃がヒットするのはほぼ同時だった。


「本当に危なかったよ――」

「ガッ!?」


 だけど僕は無傷だった。サンダースの驚く顔が目に飛び込んでくる。


「ネロ。お前一体何した?」


 僕が無事だったことにガイも驚いているようだった。


「スイムのおかげだよ」

「スピ? スピィ~♪」


 肩のスイムを撫でてあげる。スイムが心地よさそうにしていた。そうスイムのおかげ――


「スイムは恐らく体内の多くは水、なんだと思う。だけどそれなら雷を受けたら本来無事では済まない。だけどスイムには雷が通じない。それで思ったんだ。もしかして汚れのない純粋な水、純水なら雷は通らないんじゃないかってね。それで今の魔法を閃くことが出来た」


 僕がそう答えるとガイが首を捻る。


「チッ、言ってる意味がよくわかんねぇよ。大体水でお前みたいに戦えるのが常識外なんだからな」

「ハハッ、と!」


 ガイと話しているところでサンダースが再び攻撃してきた。雷は今の僕には通じないけど攻撃そのものが防げるわけじゃない。


 物理的なダメージは水の衣で防げるけど、こっちはあまりダメージを受けると破壊されてしまう。サンダースの攻撃は強烈だそこまで長くは持たないだろう。


「オラッ!」

 

 するとガイが背後からサンダースに近づき加勢してくれた。だけどサンダースが加速し一旦距離を取る形になる。


「チッ、はえぇな……」

「あれもギルドマスターの武芸だよ。雷の力で加速してるんだ。でも今の内だ。ガイ、君にも純水の魔法を――」

「うっせぇ余計な真似すんな。大体テメェだってもうそこまで魔力残ってないだろうが」

「え?」

「――話を聞いてればわかる。お前今日はずっと戦いっぱなしだろうが。しかも今の魔法は閃いたばかりだ。武芸も魔法も閃いた直後は消耗が激しい。いくらテメェの魔力が潤沢でも無限じゃねぇんだからな」


 ……気づかれていたんだ。確かに閃いたばかりだと、まだ扱いに慣れていないから魔力にしても体力にしても消耗が激しくなる。ある程度使いこんでいけば安定してくるんだけどね。


「でもほら。こうやって魔力水を飲めば」

「それはテメェ自身には効かねぇだろうが! 無駄に魔力使ってんじゃねぇ!」


 魔力給水で平気だってアピールしてみたけど逆に怒られたよ……ガイもそこは忘れてなかったか~。


「とにかくだ。セレナを信じて今はとにかくあいつを足止めするぞ!」

「――うん。そうだね! それなら水魔法・水ノ鎖!」


 僕は魔法で水の鎖を発生させサンダースの動きを封じた。これでもう少しでも足止め出来れば――後はセレナとエクレア次第だね。信じてるからね!

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