第44話 攻略再開

 ハイルトンとの戦いが終わり、僕たちは生命の水で傷を癒やし今後の事を考える。


「このまま戻るよりは五層まで下りてボスを倒した方がいいと思う」

「そうだね。でもボスは大丈夫かな?」


 ダンジョンにはボス部屋があり、一度足を踏み入れるとボスを倒さない限りは基本的には出ることが出来ない。


 ただ唯一ダンジョン脱出用のポータルストーンなどを使えばボス戦でも逃げることは可能だ。ダンジョンでしか手に入らない特殊な石だから値段は張るんだけどね。


 どちらにせよ今回は持ってきてないから挑むなら勝つのが前提となる。


「私達なら大丈夫よ。ネロが持ってきてくれた生命の水のおかげで疲れも嘘みたいに消えたしね」

「スピィ~♪」


 生命の水に関しては回復魔法を込めてもらったおかげでもあるけどね。後は魔力だけどエクレアには僕が魔力を込めた魔力水を飲んでもらった。


 エクレアは雷属性の武芸を発動した際に魔力も消費してるからね。


 これでエクレアの魔力は回復したようで喜んでいた。


 後は僕だけど、当たり前だけど自分で作った魔力水を僕自身が飲んでも効果は薄い。


 だけど魔力量は多いしまだ余裕がある。後一層の攻略程度なら問題ないだろう。


「じゃあ攻略しちゃおうか」

「うん!」

「スピッ!」


 スイムもどこか張り切ってるね。念の為盗賊からは所持品を回収しておいた。勿論ギルドへの報告用としてね。


 頭がない死体を弄るのには忌避感もあったけどね……エクレアも手伝ってくれたけどいい気持ちはしなかったみたいだ。


 気を取り直して四層を攻略し五層についた。ボス部屋のある五層は他の層に比べて構造が簡単だ。基本的にボス戦がメインと言っても良い。


「ここがボス部屋の扉だね」

「うん。色々あったけどいよいよだね」

「スピィッ!」


 エクレアが張り切ってる。僕はちょっとだけ緊張していた。ガイ達のパーティーにいた頃はボス戦にも参加したけど、あの頃の僕はほとんど役に立ててなかった。


 だけど今回はそんなことでは駄目だ。僕もしっかり戦闘に参加しないとエクレアの負担が大きくなるし何よりそんな情けない姿を見られたくない。


「私とネロだったら絶対大丈夫だよ。だって私達相性バツグンだもん!」


 ぐっと拳を握りしめて僕に笑顔を見せてくるエクレア。相性――も、勿論属性って意味で言ってるのはわかってるつもりだけどね。


 だけど信頼してもらっているなら僕もしっかり答えたいと思うよ。


「よし、覚悟も決まったし行こうか!」

「うん!」

「スピィ!」


 僕とエクレア、そしてスイムで扉の奥のボスに挑むことにする。重たそうな扉に手を触れると勝手に開いた。中に入るとギギギィと重苦しい音を奏で扉が締まりガチャッと鍵の掛かる音が聞こえた。


 部屋は広い。戦うには十分なスペースだ。奥にも扉が見えるけどあれはここのボスを倒すまで開かない。


 部屋の中に魔法陣が幾つも浮かび上がった。これはボスが一匹ではなく他にも仲間を引き連れて現れるパターンか。


「ゲコォ!」

「「「「「「ゲロゲロゲロゲロッ!」」」」」」


 現れたのは王冠を頭に載せた巨大なカエルと乗せてない大きなカエル六匹だ。


「カエルタイプの魔物か――」


 これは前のパーティーだったらセレナが青ざめてしまうような相手だね。


「ゲロゲロッ!」

 

 王冠を載せたカエルが鳴くと乗せてないカエルたちが飛びかかってきた。見るからに王冠を乗せたのがリーダーだろうね。


「こんな相手サクッと倒しちゃおう」

「うん。あ、でも油断は禁物で」

「勿論。はぁあぁああ!」


 エクレアが先ず向かってきたカエルに向けて鉄槌で反撃した。だけど――鉄槌がカエルを捉えるも滑ってしまいまともにダメージが入らない。


「嫌だこいつらヌメヌメして」

「ゲロッ!」


 エクレアが怯んだところにカエルが舌を伸ばしてエクレアをベロンっと舐めた。


「ヒッ!」


 エクレアがゾクゾクっとした顔を見せる。鳥肌も立ってるようだ。流石にあの舌で舐められると気持ち悪いみたいだね。


「「ゲコゲコッ!」」

「スピィ!」

「大丈夫! 水魔法・水剣!」


 僕は水で剣を作成しカエル二匹を切りつけた。ヌメヌメとした体は打撃だと滑ってしまうようだけど剣なら別だ。


 切り裂かれたカエルが地面を転がり粒子になって消え去った。ボス部屋に現れる魔物は死体が残らないんだ。


 よし、エクレアは、え?


「はぁ、はぁ……」


 エクレアが苦しそうに身悶えていた。これは――

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