第42話 追い詰められたハイルトン

 エクレアの武芸がハイルトンに直撃した。ハイルトンの体からプスプスと煙が上がっている。


 肌もところどころ焦げ付いているようだ。


「ぐっ!」


 ハイルトンの片膝が崩れる。地面に膝を付き苦しげな表情。あれだけのダメージを受けてもまだ意識があるのはとんでもないね。


 だけど、もう戦える体力は残ってないだろう。


「観念しろハイルトン。これで終わりだ。いくらアクシス家とはいえこれだけの犯罪行為に手を染めたらただでは済まない」

「カカッ、してやったりとでも思ったか? 塵はやはり考えが浅い」


 ハイルトンに敗北を認めよと通達する。だけどハイルトンはこの期に及んでもまだこんな事を――


「いい加減にしなさいよ。この状況でまだネロを馬鹿にする気なの!」

「スピッ! スピィ!」


 エクレアとスイムはハイルトンの態度が気に入らないようだ。ただ、気になる。まさかまだ何か企んでる?


「馬鹿が。今回の件アクシス家は関係のないこと。この私が独断でやったことよ。貴様はこれで意趣返しが出来るとでも考えたかもしれんが甘かったな」


 ニヤリとハイルトンが笑みを深める。そういうことか。

 

 確かにここまでやってきたあいつらに思うところがないわけじゃない。だけど、今の僕にとって大事なのは皆が無事でいることだ。


「くだらない。そんなの今気にしても仕方ないよ。別にお前がうちの命令があってから来てようが来てまいが、ハイルトンお前が罪を犯したことに変わりはない」

「そうよ。どっちにしろあんたは終わりってこと」

「スピスピッ!」


 ハイルトンに向けてハッキリと言い放つ。それに追随してエクレアとスイムもハイルトンを見下ろし声を上げてくれた。


「私が終わり? ククッだから貴様は甘ちゃんのカスだというのだ!」


 ハイルトンが懐に手を入れて何か玉を取り出した。まさか、何かの魔導具!? 


「水魔法・水守ノ盾!」


 とっさに盾を展開。エクレアとスイムも守るようにだ。そしてハイルトンが玉を地面に叩きつけると強烈な光が発生した。


「フンッ、今だけは見逃しておいてやるさらばだー!」


 ハイルトンの声が遠ざかっていく。あいつ、目眩ましで逃げるためにこれを――


「うぅ、眩しかった~」

「スピィ~……」


 光が収まり目が慣れて来た頃にはハイルトンの姿がなかった。


 やっぱり逃げられたか――結局残ったのは頭を無くした盗賊の死体だけだ。


「エクレア、スイム大丈夫? ごめんね僕のせいで……」


 目を瞬かせるエクレアとスイムに謝る。何か厄介なことに巻き込んだ上、散々な目に合わせちゃってちょっと申し訳なく思うよ、て何かエクレアの目が怖い。スイムからも妙な空気が――


「ネローー! もう! もう!」

「わ!?」


 え、エクレアに何か押し倒された! 僕の上に跨る形でエクレアがポカポカと僕を叩いてきた。スイムも何かぴょんぴょん撥ねていて頭から湯気が吹き出てる。


「今も自分のせいだと思ったでしょ! さっきも言ったでしょ私達仲間なんだからね! パーティーを組んだんだから! 困ったときはお互い様なんだからね!」

「スピィ!」


 エクレアとスイムに怒られちゃったよ。そうか、これが仲間なんだよね。


「ごめんねエクレアもスイムも――もう自分一人で決めようなんてしないよ……えっと」


 素直にごめんねと言えた。そして冷静になると何か今とんでもない状態じゃないかと思えてしまった。


「判ったなら宜しい! て、どうして顔が赤いの?」

「スピィ?」

「いや、その、そろそろどけて、くれると」

「え?」


 エクレアに跨がらてるのが急に気恥ずかしくなってきたけど、それに気がついたエクレアの顔もみるみる赤くなって跳ねるように立ち上がったよ。


「スピィ?」

「はは。おいで。心配掛けてごめんねスイム」

「スピィ♪」


 エクレアが離れた後スイムを抱きしめて頭を撫でてあげた。スイムの機嫌も直ったみたいでよかったよ。


 でも、ハイルトンのことがあるよね。とにかくギルドには報告しないと――


次回予告

逃げ出したハイルトンに迫る影――やめてハイルトンのライフはもうゼロよ!

次回!ハイルトン死す!?次回もザマァザマァ♪

※上記の内容は予告なく変更する場合があります?のでご注意ください。

次回どうなるのか更新頑張って応援してるよ~と思って頂けたらフォローや★を付けて頂けると嬉しいです!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る