手を繋げばお似合いの恋人

 駅から歩いて数分後の場所にある巨大ショッピングモールにやってきた。半年前にオープンして、洋服屋や雑貨屋や飲食店、映画館、など、豊富に揃っており、老若男女問わず人気が絶えることがない賑やかな場所である。


「で……何する?」

「何しよう……」

「……」

「……」


 恋人になったから何か特別なことを……と考えたが結局思いつかず……。


 つまりはノープラン。依子の様子から彼女もそうなのだろう。


「そ、そもそも恋人っていう実感も湧かないぞ……」

「ま、まぁ伎織ちゃんが強引にくっつけた部分があったから……アタシは嬉しかったけど」


 確かに強引だった。けど、遊びであんなことをやる子ではない。きっと真剣に考えた上で強引にくっつけるという方法に……


「でもよ」

「ん?」

「いくら伎織に乗せられたとはいえ、俺は即答で付き合うって言った。だから……依子と恋人になるの嫌じゃないって事だと思う」

「っ〜〜〜! そ、そう……」


 また恥ずかしくなり、互いに無言。けれど、足は進めて建物内に入る。


「あの人綺麗〜」

「モデルさんみたい」


 通り過ぎる人にそう言われる。


 隣の依子のことを言っているのだろう。改めて容姿を見る。

 髪はツーサイドアップで、格好は夏手前とあってライトブルーのワンピース。涼しげだ。ベルトでウエストが綺麗に見えている。靴は、編みこみのデザインのチャンキーミュールだ。


 いつも遊びに行く格好じゃないってだけで人ってこんなに魅力的になるだな……もちろん依子は元々可愛いと……


「じっと見んなし」

「え、あっ、ごめん……!」


 どうやらガン見してしまったようだ。


「そ、それでどこ行く?」

「どこって……うーん……」

「ま、まぁここには何回か来たことあるし、遊び尽くしたもんだよな、あはは……」


 何か楽しめる方法は……などと苦笑を浮かべている間に考えていると、依子が言う。

 

「まぁいつも通りのアタシたちでいいんじゃない? そのいつもが好きだからこうして一緒に過ごしてるんだし」

  

 ——確かに


 心の中で即答で納得した。


「だな。じゃあいつも通りゲーセンからで」

「ん、おけ。はい、手」

「お、おう」


 再び手を繋ぎ、俺たちは2階にあるゲームセンターを目指し、エスカレーターに乗った。





「お2人って本当にお似合いのカップルですね。おっと、気づかれないようにしないと……」


 もちろん妹の伎織は後をつけている。



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