21-4 魔神の正体は?

 魔神の封印場所、か

 そもそも、“封印”なんて魔法、聞いたこともないんだよな。


 「今更な質問なんですがね、“封印”ってのは、どんなもんなんです? それがわからなきゃ探しようがない気がしてきたんですが」


 支部長が知ってるとも思えねぇが、一応訊いてみる。

 そのまま受け取れば、魔獣を殺さずに捕まえて動けなくするってことなんだろうが、100年前だぞ? そんな長い間捕らえとくって、どうやってんだ?

 第一、魔獣の寿命がどんぐらい長いか知らねぇが、100年も生きてるもんなのか?


 「封印については、わかっていないのが現状だ。

  ただ、どういう方法かはわからんが、当時の文献に、ジークが“生きているが死んでいるのと変わらないから大丈夫だ”と言っていたことが残っている。

  死んでいるのと変わらない状態でずっと生きているという、不思議な状態らしい」


 生きてるけど死んでるのと同じ? ずっと死なない?


 「さっぱりわからねぇ…。

  それって、年も取らずに仮死状態になってるってことですか? 封印が解けたら、元のままの姿で暴れ出すような」


 「仮死状態かどうかは知らんが、そんなようなものだろう。

  だからこそ、フリードが魔神の封印を解いたら危険だと思っているわけだ」


 洞窟かなんかに閉じ込めたってんならわかる。出てこれないなら安心だ。だが、それだと、魔獣は洞窟ん中で死ぬはずだ。

 岩の巨人みたいのならともかく、生き物なら、閉じ込めとくだけで死ぬ。


 「魔神ってのは、ホントに魔狼の亜種なんですか?」


 「どういう意味だ?」


 「岩の巨人みたいに岩でできた狼だってこた、ないですかってことです。

  それなら、魔素のないとこに閉じ込めりゃ二度と出てこないでしょうし、年を取ることも死ぬこともない。

  壊せなかったんなら、殺さず封印って言い方も間違ってない。

  それで、封印を解くってのが魔素を与えるってことなら、すぐに復活するでしょう。

  岩の塊みたいな──鉄の塊みたいな狼なら、そのまま土に埋めとくとかだってできるはずです。

  もしそうなら、見付けるのは無理じゃないですか?」


 ちょっと思いついただけだが、自分で言ってていいセンいってる考えのような気がしてきた。

 なぜか動く鉄の狼なんて、魔神って呼び名に相応しい気がする。


 「それは…思いつかなかったな。

  たしかにそれなら筋は通るが…」


 支部長も思案顔で答える。


 「魔神は、氷の魔法を使うという。

  鉄の狼に魔法が使えるかという疑問は残るな」


 「鉄の塊が動くなら、魔法くらい使うかもしれませんよ。

  岩の巨人だって、硬化の魔法は使ってたようですから、氷の魔法を使えるやつがいたって不思議じゃないでしょう」


 そう、岩の巨人は、魔素をなくした後、斬りやすくなった。つまり、岩の塊のくせに魔法を使ってやがったってことだ。


 「なるほど。

  現状、手掛かりがない以上、魔神がその手のものと仮定して探すのも有効な手かもしれん」


 いや、だから、ただの鉄の塊になってたら探せねぇっつってんだろが。


 「そうだとすると、探す方法がないでしょう」


 そう思ってぶつけたんだが。


 「仮に魔素をなくすことで止めたとして、だ。

  100年以上もの間、どうやって魔素がないままにしておく?

  動く死体は、魔素を戻した途端、立ち上がったのだろう?」


 そうか。魔素が戻ると復活するかもしれないってことは、ずっと魔素のないままにしておく必要があるわけだ。

 魔素をなくす方法か。

 一番手っ取り早いのは、魔素をなくす結界を小さく作って、その中に入れることか。

 結界の魔法陣を長持ちする材質で作らなきゃならんが、それを言ったら、どんな方法でも時間との戦いになっちまう。

 少なくとも、定期的に面倒見なきゃならん方法だったら、今忘れられてることにゃなってないはずだから、時間が経っても大丈夫な方法にしてあるはずだ。どっちにしても…


 「魔素を使ってるはず、か」


 「魔素?」


 「魔神に魔素を与えないためには、どんな方法にせよ、魔素を使ってるはずです」


 「魔素をなくすために魔素を使うのか?」


 「そうです。たとえば、魔法陣による結界術で魔神を封印してるとします。

  結界術そのものは、魔素を使って動いてるはずです。

  どんな方法であれ、魔神が簡単に復活できないようにするには、魔法で抑えとく必要があるはずなんです。

  五角形の魔法陣は、きっとその魔法を邪魔するためのものでしょう」


 「なるほど。

  つまり、魔素または魔力の流れを追っていけば、封印の場所を見付けられるかもしれんというわけか」


 「そういうことです。

  広すぎて、あまりやりたくありませんがね」


 「だが、闇雲に探しても見付かるとは限らんし、十分有効な方法だろう。

  早速明日から試してみてくれ」





 自分で言っといてなんだが、えらい貧乏くじ引いちまった。





次回予告

 「レイルさんに叱られました。あなたを信じられないのかって。ごめんなさい、あなたを笑顔で送り出さなければいけないのに、私、あなたに何かあったらと思うと不安で…」

 「セシリアはさ、独占欲は結構強いと思うよ」

 次回「ごつひょろ」22話「レイルの秘密」

 「おいレイル、こりゃいったい何のマネだ!?」

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