17-3 次の依頼
街に戻って恒例の支部長への報告をする。
「確かに魔素を吸う魔素溜まりでした。
ただ、位置は魔法陣があった場所と同じだし、出てきた魔獣は死体みたいなやつだったんで、新しい魔法陣を置いた結果なのかはわかりません。
あと、死体が魔素溜まりから出てきたかどうかもわかりませんでした。
洞窟を出る頃、奥の方から現れたってだけです」
わかっていることだけ伝えて、首と魔石を渡す。
首を見て、セシリアが息を呑んだ気配がしたが、悲鳴は我慢したようだ。
「こいつがいたのか」
支部長の声も堅い。
「風の刃を飛ばしてきました。他の魔法を使える可能性もありますが、試してはいません。
体の方もこんな感じで、服や装備は身に付けていません。
魔素をなくすと倒れて、戻すと立ち上がるって感じで、岩の巨人同様、魔素がないと動けないようです。
この前の一ツ目は魔素がなくても動いていましたから、やっぱ生き物とは違うんでしょう」
「生き物でないのは見ればわかるが、そうか、ギガントの時も魔素をなくして戦ったのか。
…結界術、というのを知っているか?」
「結界術? 聞いたことありませんね」
「かつて、魔法陣を使って魔素のない結界を作り、その中で魔獣と戦うというやり方があったらしい。
自分がやられても困るから、技術が秘匿されたまま廃れてしまったそうだ。
普通の魔獣を相手にしても有効な戦法らしいぞ。
お前達も逆にやられるかもしれんから、気をつけろ。
もっとも、自力で魔素をなくせるような者はそうそういないそうだから、お前達にしかできないことなのかもしれんが」
ああ、そうか。対策されることばかり考えてたが、逆に俺達が食らう可能性もあるのか。
まぁ、俺達は魔石をそれなりに持ち歩いてるし、大丈夫だとは思うけどな。
それより、結界術の方か。
「魔法陣にそんな使い方があるんですか? 前の話の時は聞かなかったと思いますが」
「それはそうだ。
魔法陣関係の調査で、先日ようやくわかったことだ。
もっとも、さっき言ったとおり、どんな紋様だったのかはわからん」
「どんなものかわからないのに、機能だけはわかるんですか?」
「機能ではなく歴史の面から出てきた話でな。
百年以上も前に、結界術を得意とした魔法士がいたらしい」
「百年前!?」
「百年
まだ“そういう術があった”くらいしかわかっていないが、いずれもう少し詳しいことがわかるだろう。
まだ調査中の案件だ。記録が見付かれば、紋様もわかるかもしれん」
歴史ねぇ…。まぁ、使ってた奴がいるなら、そいつの足取りを追えばわかることもあんのかね。
百年も昔だと、記録なんて残ってるか怪しいもんだけどな。
…あれ?
「魔素を吸う魔法陣でぐるりと取り囲めば、内側は魔素がなくなるんじゃないですかね」
「なに? …ふむ。
たしかにそうだが、今のところ、魔素がなくなるほど吸収する魔法陣は見付かっていない。
お前達が気付くまで、魔法陣が魔素を吸っていることすらわかってなかったくらいだからな」
ああ、そうか。そういや、少しずつしか吸わないんだった。
「あの妙な魔素溜まりくらい吸っても、まだ足りませんね。
それに、そんだけ大量に魔素を吸ったら、何に使うかも難しそうだな」
「そういえば、お前達が見付けてくれた仕組みは、外側の紋様で吸った魔素を内側の紋様で使うんだったな。
そうか、吸うだけでは困るな」
「まぁ、俺達は素人ですから、そういう難しいこと考えんのは専門家に任せますよ」
「ああ、そうだな。
ここでわかるようなものでもあるまい。
とにかく、よくやってくれた。
討伐分も含めて、報酬を受け取っていってくれ」
「ええ、さすがに今回は連ちゃんだったんで少し休ませてもらいます」
「それは構わないが、休んだ後でまた仕事を頼みたい」
「そりゃ、仕事しなくちゃ食ってけませんからやりますがね。まさか今度は南に魔素溜まりが見付かったなんて言うんじゃないでしょうね」
もちろん本気で言ってるわけじゃない。
この前、軽口で東に~なんて言ったら大当たりだったから、言わない方がよかったかもしれない。
だが、支部長が言った仕事は、予想外のものだった。
「セシリアがリアンという街の支部に行くんだが、その間の護衛を頼みたい」
リアンって、前に俺とレイルがいた街じゃないか!
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