10-R 帰った後で

 フォルスとレイルが応接室を出てしばらくすると、別の男が招き入れられた。

 男は、さっきまでフォルスが座っていた椅子に座り、支部長と対峙した。


 「2人はどうだった?」


 「あなたもお人が悪い。ちっこい方も魔法士だって、どうして教えてくれなかったんです」


 支部長の問いに対し、男は、やや困ったような声音で抗議した。


 「レイルが魔法士? あれは剣士のはずだが」


 困惑したような支部長に、男はなおも言い募る。


 「いえ、明らかに魔法を使っていました。

  見たのは身体強化だけですが、フォルスでしたか、あのでかい方より魔法の腕も上だと思います。あの2人組、実はレイルの方が中心ですよ。

  フォルスは、確かにいくつか魔法を使っていましたが、大した腕じゃありません。おそらく対外的な窓口ってのが役割なんでしょう。

  魔狼を討伐できたのも納得です。あの体格でオーガを力で蹂躙するんです、悪い夢でも見ているようでしたよ。力は人外並み、速さも相当なものです。

  しかも、時折、不自然に魔素がレイルに流れていってました。どれくらい魔素を使ってたのかまではわかりませんが、狭い洞窟の中とはいえ私が魔法を使おうにも使えない状態でしたからね。かなり大量に使っていたはずです。

  ほかと組みたがらないわけですよ。魔法士のいるパーティーと組んだら、そいつが役立たずになるんですから。

  わざわざ足手まといを連れて行くのは嫌でしょうし、バレて文句を言われるのは、もっと嫌でしょう」


 「なるほど。君がそう言うのなら、そうなのだろうな。

  身体強化か。ほかに何を使えるのか、気になるな。

  魔法陣についても、あいつらは研究者以上の解析をしてみせた。

  それもレイルの力だと思うか?」


 「さすがにそれはわかりません。見ていたわけではありませんから。

  ただ、それは魔法士としての能力とは別の話ですから、フォルスが研究者として有能である、という可能性は十分あるかと思いますよ」


 支部長は、少し考えた後、答えた。


 「レイルが魔法を使えることがわかったのは、大きな成果だ。君に行ってもらってよかったよ。

  次は、別の角度から検証が必要だな。

  さて、誰に当たらせるか」


 「まったく、お人が悪い。

  彼らをどうするおつもりです?」


 「どうもせんさ。ただ、実力を知りたいだけだ。

  たった2人で魔狼3頭を殲滅する戦闘力、どうにも進まなかった魔法陣の研究を一足飛びに進めた発想力、ほかにどれほどの力を隠し持っているのか。

  うちのような小さな支部では、抱えている冒険者の力量を正確に把握することは、重要なのだよ。

  特に、妙な事件が起きている今はな」


 「そうですか。支部長というのも大変ですね。

  それでは、私はこれで」


 男が部屋を出た後も、支部長は腕を組んだまま何事か考え込んでいた。





次回予告

 「は? 逃げた一角馬の捕獲? なんだよ、その妙な魔物は?」

 「ですから、なんとか捕獲をお願いします。なんでも、その、囮を使うと簡単に寄ってくるらしいのですが…」

 「処女を好むってのは、どういう冗談だ? どこのスケベ親父だ、その馬は!」

 「私に言われましても…」

 「ふうん。処女なら、心当たりがあるけど」

 わけのわからない依頼にフォルスとレイルが挑む!

 次回、「ごつひょろ」11話「一角馬捕獲」

 大丈夫なのか!?

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