9-3 魔法陣の仕組み
宿に戻った後で、内側だけ描いた魔法陣を眺めたが、線が全体的に光ってるだけで、どこに魔力が蓄えられてるのかはわからない。
昼間、結構な量の魔力を注ぎ込んだのに、だ。
魔力を籠めた魔石なら、誰が見たってわかるくらい光る。俺の目で見たらなおのことだ。
それなのに、この魔法陣はわずかな魔力が駆け巡ってるだけで、大量の魔力が隠されてるようにはとても見えない。
暗くなるまでちょいちょい様子を見てたが、周囲の魔素には変化はないようだ。
ほんとに、どうやって魔力を溜めてんだ?
そのくせ、暗くなるとちゃんと光りだした。
どこから魔力が出てるんだ?
光は魔法陣全体から出ていて、どうやって光ってるのかは相変わらずわからない。
少しだけ今までと違うのは…
「なぁ、レイル。なんか明るくないか?」
「奇遇だね。僕もそう思ってたところだよ」
どうやら俺の気のせいじゃないらしい。
魔素吸収用の円を使わずに直接魔素をぶつけたせいか? …つまり、あの円には、吸収する魔素の量を調整する役目もあったってことになるな。
「やっぱ、外側の円がないから…だよな」
「ん~、その程度でこんなに変わるもんかな?」
「例えば、酒瓶から注ぐのと、水差しから注ぐのとじゃ、全体の量が同じでも一度に注がれる量が変わってくるよな。そんな感じなんじゃねぇか?」
「じゃあ、あの魔法陣の外側は、吸収する魔素の量を一定に保つ役目があるってわけ?」
「俺が無理矢理押しつけた魔素が一定量を超えたせいで、本来より明るくなったって考えりゃ、説明できんだろ」
「ん~、まあ、確かにね。
…それじゃあさ、例の洞窟の魔法陣でも、同じことが起こるのかな?」
「そうなんじゃないか? 外側は共通なんだし」
「もし、あの時の戦いで、外側の円に傷が付いてたら?」
「それはない。俺は、あいつを倒した後で描き写したんだ。傷なんかあれば、気が付く」
「傷じゃなかったら?」
「おいおい、傷がなけりゃそもそも……血か!?
あいつの血がどこかに垂れて、インクと同じように線を消してたら…」
「可能性はあるよね。
フォルスもあいつも魔法を使ってたから、吸い込む魔力もあったはずだし」
「確かにな。
高く売れそうなネタがゴロゴロしてるじゃないか。
俺達も、暇な時はまた調べてみるとしてだ、面倒なことは学者に任せて、おいしいとこだけつまみ食いしたいよな」
「さすがフォルスだね。それでいこう」
翌朝、ギルドに行って実験の報告をした。
「おいおい、いくらなんでも少し早過ぎやしないか?」
「発想の転換ってやつですよ。
この魔法陣は、外側と内側で目的が違うんです。
光る魔法陣の内側だけを用意しました。
まず、こいつは描いたばかりだから光りません。試してください」
「光らないな」
「次に、こいつに魔力を与えます」
「なに?」
「今度は光りますよ。試してください」
「信じられん。本当に光っている。
だが、妙に明るくないか?」
「そう、普通より明るく光ります。
俺が強めに魔力を籠めたからです。多分、自然に吸収するより一度に入ってくる量が多いんでしょう。
逆から考えると、外側の紋様は、魔力をうまい具合に与える役割を持ってたんじゃないかと。
で、あの洞窟の魔法陣も、もしかしたらあの魔法士の血かなんかで外側の線が一部分消えて無効になったのかもしれません。それで、その後魔力の供給過多で暴走したのかも」
「なるほど。
どうだ、
「悪いんですが、俺達は気ままにやるのが好きなんで、専属は勘弁ですね。
門外漢が思わぬ成果を挙げたってだけですからね、これからも結果を出せとか言われるのはちょっと」
「そうか。
まあ、無理強いはできんな。
また何かあったら、アテにさせてもらおう。
この件については、それなりの報酬を用意させてもらう。その代わり、口外無用だ。いいな?」
「もちろん」
こうして、俺達は魔法陣の話から抜けることになった。
次回予告
貴族の護衛を依頼された2人。
貴族嫌いのレイル、苦手な洞窟での仕事。
そして、ここにもいるはずのないものが。
次回「ごつひょろ」10話「洞窟探検」
その裏には…。
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