第64話
降り続く雨が辺りの景色と音を支配し五感のいくつかを鈍らせる。
目の前に倒れ込む男は立ち上がろうとしていたけどサーロスはいつの間にか抜いていた剣で躊躇なく男の喉元をついた。
仄暗さに覆われた鮮血が溢れ、ぬかるんだ地面に雨水と共に混ざると同時に、男の纏う灰色のローブの肩口が赤黒く滲んだ。
「ネール、離れろ」
雨音に混じって、だけど、はっきりと聞こえた。
サーロスは半開きの扉に視線を向けている。メルルを背に感じながらサーロスの視線を追う様に扉を見つめつつ、ゆっくりと後退った。
暗闇の、扉の向こう。扉に引かれた灰色の明と、暗の境目から数人がゆっくりとこちら側に、建物から出てきた。体つきから男だろう三人が徐ろに姿を表した。
name:カタリ・チャイカ
age:19
job:灰読師(14/100)
lv:22
exp:560/327000
skill:剣術lv.1 短剣術lv.2 神聖魔法.lv2
HP 74/74
MP 38/38
STR:49
VIT:43
INT:32
RES:48
AGI:31
DEX:37
男達は、地面に倒され息絶えた男を含め同じ灰色のローブに身を包み、注視しなければ気付かない微妙な程の体格差の為、一見全員が、まるで同じ個体が並び立っているように錯覚させられる。
男の一人を鑑定し、そして倒された男を含め全員の鑑定を行なった。男達の姓は同一のものだった。......って、チャイカかよ!
ゲームのメインストーリー序盤から中盤の間で主人公はラスボスの一体、神ダグダと間接的に関わる事になるのだけど、その関わりって言うのが、ダグダの使徒である女性チャイカとの出会いだ。
チャイカは自分こそが神ダグダの唯一の預言者であると自称し様々な慈善活動を主に王都で行う。
病に苦しむ人がいれば無償で世話をかって出たり、貧しい人達に出会えば施しを与えるといった感じだ。
そんな傍らでそれらの慈善、慈愛は全て大地を統べる神ダグダの教えによるものだと主張して回った。
そんな活動を積み重ねながら同じく神ダグダを崇める宗教組織ダグダ教への批判も行い、もともとダグダ教に不信感を抱いていた人々の支持を後押しに聖女として讃えられ周知されるようになる。
ダグダ教は基本信仰を隠れ蓑にしたお金儲け主義の組織だからね。
そして主人公と出会い主人公の志しに共感し仲間となる。主人公も年上の美人お姉さんに信頼と憧れを抱く。ゲームキャラとしては序盤では貴重な回復役なので結構役に立つキャラだった。
てゆーのが、主人公がチャイカと出会う前あたりから出会った後しばらくの、主人公というかゲームのプレイヤーがチャイカについて見聞きする情報になるんだけど、メインストーリーが進むにつれ、その化けの皮が段々と剥がれてくるんだよね。
物語序盤では『デムナ戦記』のメインヒロイン扱いだった。清廉潔白、眉目秀麗な容姿の聖女って設定で、ストーリーが進むにつれ主人公との親密度が高まってるような表現もあったし、なんか二人の間に芽生えつつある恋愛感情を匂わせるような会話だったりもあった。
そんなチャイカは実は中ボスでしたって流れ。チャイカは神ダグダが創り出した虚像で、ある目的を果たす為にダグダはその虚像を操っていた。
その目的の為の手段の一つとして支援者の資金を元手に孤児院を開いているのだけど集めた孤児達に精神操作を行い人殺しの道具となる人材を育て集団を作った。
ある程度の年齢となった孤児を4〜5人のグループに分けて、ダグダ教の布教と称し人殺しの旅に送り出す。その際、孤児達はチャイカよりジョブとチャイカ姓を授かる。
見た所、男三人は僕よりちょっとステータス値が高いくらいで、サーロスの方が全然高いから数的不利だけど問題なさそうだ。
河岸に滞在する人達の姿が誰一人見あたらない事、引きずった後が複数ある事、目の前にチャイカの子供達がいる事から多分この辺りに滞在していた人達は、もうこの世にはいないかも知れない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます