第52話

 野営はまず竈造りを行う。竈といってもそこら辺に落ちているそこそこの大きさの石を集めてドーナツ型に配置した簡単なものだ。


 その竈に荷馬車に積んでいた薪を数本くべて平原に落ちてる枯れた草を集め伯父さんに渡すと伯父さんが枯れ草に火をつけて種火を作り、くべた薪に火を移した。


 竈の火は食事の支度に利用するのと一晩中火をつけっぱなしにして暖を取るのに利用した。今の季節は春が過ぎた頃なんだけど夜は結構冷える為だ。


 食事については伯父さんが準備してくれた。年季の入った鍋に少量の水と塩を入れて火をかけ、そこに干し肉と少量の野菜を入れて煮込んだスープに保存用のカッチカチのパンを浸してふやかして食べた。


 前世の味覚そのままであれば微妙過ぎる味だけど僕も慣れたもんである。もちろん味がいいに越した事はないし、美味しいものが食べたい欲求はかなりあるんだけどね。


 それよりも気になる事があって食事が終わった後に伯父さんと談笑している時に質問してみた。


 「ねぇ、伯父さん。魔法ってどうやったら使える様になるの?」


 というのも竈に火を焚べる際に伯父さんが魔法を使っているのを見て、そういや随分前に母ちゃんがあんたももうちょっと大きくなったら使える様になるよって言ってたなぁ、ってのを思い出したからだった。


 「あれ?ミュリーネやダグから聞いてないのかい?」


 父ちゃんと母ちゃんからは聞きそびれた事を伝えると伯父さんは説明してくれた。


 簡単に言うとダグダ教の神の御告げを聞けば誰でも使える様になるそうだ。10才になると教会で一回だけタダでステータスが確認出来るっていう、あれだ。


 母ちゃんが言ってたもうちょっと大きくなったらのもうちょっとは10才になったらって事だったのか。てか、母ちゃんそれ大事なんだからちゃんと教えといてよぉ。


 まぁ、知っていたとしても結局は教会には行かなかったと思うけどね。


 伯父さんに詳しく聞くとどうやら叔父さんや母ちゃんが使っていたのは生活魔法って呼ばれてるらしいんだけど一般的には生活魔法は魔法扱いされていないらしい。


 生活魔法の全てが威力が弱く、水魔法なんて一日に水の雫が一滴出せるかどうかみたい。他の属性の魔法も同じ様なもので殆ど役に立たず、その中で唯一役立つのが火付けに使える火の魔法らしい。


 一般的に魔法として捉えられているものは威力のある攻撃魔法や回復魔法等、まぁゲームで使用できた魔法が世間一般に魔法として認識されてるって事だと思う。


 神の御告げを聞いた大半の人は生活魔法しか使えないが才能がある人は魔法が使える様になり、その才能を持ってる人の殆どが貴族の生まれのようだ。


 ゲームでは生活魔法なんてなかったよなぁ。それにしても残念だな。特に火を起こす時に魔法が使えれば凄く便利なのに。


 11才の僕が今から教会に行ってもタダで神の御告げを聞く事は出来ず結構な金額がかかる。魔法は諦めるしかないな。

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