第43話
普段魔物と戦っている場所より一歩森の奥へ。この日僕は思い切ってより強い魔物と対峙する事に決めた。樫の木の棒を二本と腰に解体用のナイフを携え慎重に進んだ。
木こりのおっちゃんに作ってもらった樫の木の棒はめちゃくちゃ丈夫で数ヶ月使い込んでも全然壊れなかったけどいざという時に備えて予備に一本持ち歩く事にしている。
解体用のナイフは地道に研いでいたら随分刃がちびったけどなんとか切れ味を取り戻していた。普段ナイフは持ち歩いていない。
解体の仕方を忘れない様に練習で魔物を捌いたりしてたんだけど手が滑って魔物の骨に強く当たり刃がちょっと欠けた事があった。
まだ父ちゃんと母ちゃんには魔物と戦っている事を伝えていないから解体しても魔物を食べられない。
だから当分魔物の解体はやめとこうって決めた。解体した魔物が勿体無いから自分で食べようかとも思ったけど火を起こす道具がない。
それに考えてみればそもそも火を起こしてその煙で村の誰かに見つかる可能性もあって、それは非常にまずい。流石に生で食べる勇気はないし。
だから肉を食べようとするなら家に持って帰って母ちゃんに魔法で火を起こしてもらわないといけない。
そういえばずいぶん前に母ちゃんが「あんたももうちょっと大きくなれば簡単な魔法を使える様になるよ」的な事言ってたな。
だけどレベル上げてんのに一向にMPは0なんだよなぁ。今度それとなく母ちゃんに聞いてみよ。魔法使ってみたいし。
今回は普段なら使わない様にしている解体用ナイフを持ってきている。樫の木の棒で苦戦する様ならナイフを武器として使おうと思ってる。普通に考えて木の棒より刃物の方が攻撃力高いだろうし。
ナイフで魔物を攻撃すると修復不可能な程に刃が壊れちゃうかもしれないけど、そん時はそん時って割り切るしかない。とにかく自分の生命優先で立ち回りたいからね。
ホーンセーブルやフォレストウルフが襲ってきたけど簡単にあしらい森の奥へ。森の奥へ進むにつれ心なしか空気が重苦しくなってる様な気がするけど、気のせいかな?
奥に進むにつれ段々と草木の密度が高くなり視界が狭まっていった。突然、近くの草木が揺れたと思ったら鞭の様にしなる何かが急に草木をかき分けこちらに向けってきた。反射的に飛び退きなんとか躱した。
モーグトレント
樹木型の魔物
レア度D
樹木の姿をした魔物
硬化した枝を触手の様に使い獲物を襲う
実はゲームではマチカネ村周辺で出没するのはこのモーグトレントの上位種であるマルモグトレントが多かった。突然の攻撃を躱せたのも、トレント系の魔物がそろそろ現れるんじゃないかと辺りの木を警戒してたおかげだったりする。間違いなく今までより強い魔物だ。
モーグトレントの姿は幹の太い木そのものだったけど幹の太さの割には背丈が2m程で周りの森の木々と見比べるとその姿は違和感だらけだ。
鑑定をかけ、モーグトレントだと確認した直後、最初に躱した枝とは別の枝が襲ってきた。
うねうねとうねりながらこちらに伸びてきた枝だけどホーンセーブルやフォレストウルフの突進とあまり速さは変わらなかったため、自分が思っていた以上に簡単に躱せた。
その後もこちらへの攻撃は続き、しばらくモーグトレントの攻撃を躱し続けていたら気付いたのだけど、どうやらモーグトレントは数本の枝を操ってはいるけど一回の攻撃に一本の枝しか使わず、数本の枝で同時に攻撃をしてこない。理由は分からないけど数本で同時に来られたら躱すのに苦労するだろうから助かる。
そろそろ仕掛けてみようと思い、攻撃を躱した後、透かさずモーグトレントとの距離を詰め振りかぶった樫の木の棒を叩きつけた。
カンっという音がなったけど、効いてない?距離が近づいたため鑑定でステータス詳細が確認出来たが、どうやらダメージは与えられている様だ。
相手には顔とかないから表情から探る事はできないし、手応えもいまいちだったので不安になったけど後4〜5回同じ攻撃で倒せそうだ。
枝を躱しては攻撃を繰り返すうち、うねうねしていた数本の枝全てが動きを止めて枝垂れた。どうやら倒せたようだ。思っていたよりあっさり倒せたな。
経験値を確認すると750入ってる。ホーンセーブルがサファイアピアスの五倍効果で250だったから丁度3倍だ。
こりゃ、楽勝じゃん!よしこの周辺でモーグトレント狩りと行きますか!
という訳で次の獲物探しに森をうろつくとすぐに先程と同じ様に枝攻撃が急に襲って来たので躱した。
よし!全然余裕で躱せる!って、痛っ!
気づくと背中から攻撃を受けた。どうやら躱した所に別のモーグトレントがいて、その攻撃を食らってしまった。
痛かったけどステータスのおかげかダメージはそれ程でもないから問題なさそうだ。
取り敢えず先に一体倒して数を減らそう——痛いっ!
二体のモーグトレントの攻撃をそれぞれ躱して一体のモーグトレントに攻撃をしようとしたらまた別の方向から枝が伸びて来て、樫の木の棒を振りかぶってたから躱せず受けてしまった。
さ、三体!?僕が怯んだ隙にまた枝が伸びてきたので躱した。躱して躱して躱して......って、四体いるじゃん!
流石に四体からの攻撃は躱すのが大変で、相手の数を減らそうにも一体に攻撃しようとすると違う相手の攻撃を食らってしまい全然こちらから攻撃する事が出来なかった。
攻めあぐね防戦一方になり、どんどん攻撃を受ける回数が増えてしまい身体のあっちこっちが痛くなった。次第に一方的にボコられる状態になってしまった。
いたっ!いたたたっ!だ、駄目だ!戦略的撤退っ!
という訳で逃げた。幸いモーグトレントは根を張った地面から動けない様で逃げる僕を追いかけて来る事はなかった。
誰だよ、楽勝なんて言った奴は!
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