第36話
頑張って薪作りの手伝いを行なったおかげで多めに魔物の肉を報酬として持って帰る事が出来て父ちゃんも母ちゃんも大喜びだ。久しぶりに食べたお肉はとっても美味しかった。
欲をいえばもっと塩味が効いていて胡椒か何かがあればよりいいのだけど、それでもやっぱ、お肉は最高です。
まだ騎士の戦いぶりが見れてないし、お肉をもっと食べたいから薪作りの手伝いは継続したいのだけど並行して湖でレベル上げの続きを行いたい。
そこで父ちゃんと母ちゃんに相談して午前中の農作業の手伝いを免除して欲しいと伝えたところ、すんなりOKが出た。父ちゃんも母ちゃんもお肉が食べたいようだ。
薪作りの手伝いを行う村人が減ってお肉が余るからその分頑張っている僕に報酬として沢山お肉をもらう事が出来ているのを父ちゃんも母ちゃんも知っているから薪作りが終わるまでの間、もらえるだけもらっておいでって話になった。母ちゃんは一度に食べ切れないお肉を干して干し肉にしたり、燻製にしてたりしてた。
というわけで午前中から昼過ぎまでは薪作りの手伝いを行なってその後は湖でレベル上げに時間を割く事にした。
一か月が経ち薪作りの手伝いをしていく中で木こり達や騎士達とより仲良くなれた。といっても騎士達とは挨拶をする程度だが。
5人いる騎士達全員が貴族なので失礼があっては不味いとさりげに避けるようにしていた。特に副団長のゴーティとはタイミング合わなく挨拶する機会すらなかった。
一方で木こり達とはよく会話すようになり、作業中に色々な話を僕にしてくれた。湖でのレベル上げも順調で、まだレベルは上がってないけど木こりのおっちゃんに作ってもらった樫の木の棒の攻撃力が今まで使っていた自作の尖った木の棒より高いためか、かなり楽に魔物を倒す事が出来ていた。
この日は伐採した木の枝を切る手伝いをお願いされ鉈を使って枝を切っていた。木こり達は小さい癖に力があってセンスがあると僕の事を褒めてくるので気をよくした僕は調子にのってバッサバッサと枝を斬り落としていた。
褒められて伸びるタイプですから、僕は。まぁ、職業が農民とはいえレベルはある程度上げてるから同世代の子供とは比較にならないぐらい力と体力はあるからね。
それにしてもやっぱり金属の刃物は凄くいいなぁ。手に持つ鉈を見ながらこれで魔物と戦えたらいいだろうなぁ、欲しいなぁ、魔物を解体するナイフも欲しいなぁ、くれないかなぁとか思いながら、木の枝に向かって鉈を振り下ろし、枝を斬っていた。
しばらく作業をしていると休憩時間になった。休憩は交代制なので僕と数人の木こり達が休憩している間も森の方では伐採は続いていた。休憩中も木こり達と話をしていた。
「いやぁー、坊主は働き者だな。ネールだったか?うちの息子と同じぐらいの年なのにしっかりしてんなぁ」
「おっちゃん、子供いるの?」
「ああ、いるぞ。ここにいるやつは大体故郷に家族がいるんだよ」
木こり達はそれぞれどこかの商業ギルドに所属していて普段は木材調達の為に地元で木を切っているらしい。たまに領主から商業ギルドを通して辺境の村への短期間の出張作業を募るらしい。しばらく拘束される分、賃金がいいんだって。
「短期間とはいえ家を空けないといけないし、辺境まで旅するから色々危険があったりするんで、その分賃金が良くて稼げるんだよ。それに今回はマーウェル伯爵様の騎士団の方々が護衛していただけるからな。あの方達は、凄く評判がいいんだよ。だから今回はいつもより木こりの数が多いのさ」
おっちゃんは詳しく話さなかったけど大抵騎士は貴族出身者で構成されている。平民に対して扱いが悪い貴族様は多いから気をつけなさいって前に母ちゃんから聞いた事がある。
報酬が良くても評判の悪い貴族と旅するなんて皆んな嫌だろうから、評判の悪い騎士団が護衛だと木こりが集まんないんだろうな。
「ところで坊主は毎日手伝い頑張っているけど、他の子供達みたいに飽きたりしないのか?」
「あんまりこの辺だとお肉が手に入る機会が少ないから、お肉を貰うために手伝いしてるから飽きる事はないかな。貰える機会にしっかり貰っとかないとね」
「へぇー、しっかりしてやがんな」
「それとは別に手伝いしてたら騎士様がどうやって魔物と戦っているのか見れるかなと思ってるんだけどね」
「やっぱり坊主も男の子だな。騎士様に憧れてんのか」
「まぁ、そういう事」
別に憧れてる訳じゃないんだけど、憧れてないなんて言ったら不自然だし。
「ほぅ、騎士に憧れているのか」
と、急に後ろから声を掛けられ振り返るとおっきな熊、もといマーウェル騎士団副団長のゴーティがいた。どうやら僕と木こりのおっちゃんの話を聞いていたようだ。
「君は確か......ネール君、だったかな?いつも手伝いを頑張ってくれているようだな。ありがとう」
「いえ、騎士様。畏れ多いです。それに報酬の魔物の肉を沢山頂いております。こちらこそ報酬を得る機会を頂き、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げた。副団長のゴーティとは話をするのは初めてだった。緊張したけど失礼のないように返事した。返事、出来てたよね?
(......ふむ。確かに皆の言う通り農民の子にしては、不自然な程に礼儀正しいな)
何やら思案顔のゴーティの顔をみて、ヤバい!何か失礼な事言っちゃったかな!?と焦った。強面だからなんか怒ってるように見えちゃう!
そんな僕の心情を悟ったのかゴーティはこちらににっこりと笑いかけた。
「いやいや、すまんすまん。随分礼儀正しい返事が返って来て驚いたのだよ。君はこの村の農家の子だったかな?」
「はい。父も母もこのマチカネ村で農民として暮らしております」
よかったぁ。別に怒ってた訳じゃないのか。貴族様怒らせちゃったら僕みたいな農民の子なんかその時点で人生詰んじゃうよ。
「......ところで君は騎士が戦っている所が見たいようだね。どうだい?一度見てみるか?」
「えっ?」
ゴーティからの急な提案にびっくりした。
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