第20話

 釣りの道具を揃えるのに結局二か月掛かってしまったけど、遂にこの日がやって来た!


 と、いうわけで自作の釣り道具とクズ野菜を持って湖までやって来た。相変わらず綺麗だけど前回来た時よりも静かだ。前は魔物に追われてなのか水際で魚が数匹パシャパシャ泳いでいたけど今日はその姿が見えない。


 もしかしてこの二か月で魚が全部食べられちゃったのかもしれないな。まぁ、いいや。とにかく僕の目的はヨコズナデビル。魔物だ。魚がいなくなったなんて知ったこっちゃない。優先されるべきは僕の経験値なのだ。


 と、いう訳で早速自作の釣り針にクズ野菜を深く刺し込んだ。野菜の重みがちょうどいい錘になってる。縄を右手でクルクル振り回して遠心力を使い湖に投げた。


 ポチャン!と結構大きな音を立てて釣り針が水の中に入ったけど2メートルぐらいしか投げれなかった。自分の非力さを嘆くと同時にまだ8歳だし、農民だしと心の中で言い訳しつつゆっくり縄を手繰った。


 魔物を誘うような気持ちで縄を手繰ったけど反応なし。投げては手繰り、投げては手繰りを繰り返した。


 すると数十回目、何か縄を手繰る手が重たい。まさか?力をじわりと込めて縄を引っ張ると間違いなく抵抗感がある。


 きた?きたの?てか、重っ!


 両手で力一杯縄を引っ張っても、ちょっとしか手繰り寄せることが出来ない。


 握力がなくなっていくぅ!


 我慢して格闘していく中、距離が近くなると縄の先、はっきり綺麗な水の中に魚のような影が見えた。


 「鑑定!」



ヨコヅナデビル

魚型の魔物

レア度E

雑食で繁殖力も高い

-ステータス詳細略-


 別に「鑑定!」って叫ぶ必要なかったんだけどついテンション上がって叫んでしまった。


 よし!あとは釣り上げるだけだ!


 必死に縄を引っ張り、あと少しの所で思いっきり縄を引っ張った。醜悪な顔でパクパクしている口にはびっしり鋭い歯が生えてるヨコズナデビルが、勢いよく僕の顔の横を通り過ぎた。


 地面の上でビチビチ暴れている。思ってたよりも全然小さくて驚きだ。あんだけ力強かったのにやっぱり魔物って事なのか。


 小さくても口は大きく開くのかがっつり釣り針が食い込んで頬を突き破っている。とにかくこれで念願の経験値ゲットだ!どれだけ経験値を取得したか自分に鑑定をかけて確認してみた。


 あれ?経験値が入ってない?


 未だにビチビチ地面の上で元気よく暴れているヨコズナデビルに目をやった。


 絞めないとダメって事なのか?


 ヨコズナデビルに近づいてみるとすっごい怖くて気持ち悪い顔してる。デビルって名前がつく訳だわ。


 さて、どうしたもんか。下手に触ろうとして噛みつかれたら指が無くなっちゃいそうだ。


 とりあえず落ちてる石を投げつけてみた。カンッと乾いた音がして弾かれた。むむむっ。それならばと両手で何とか抱えられるぐらいの大きな石をフラフラしながら持ち上げ勢いをつけ頭目がけて投げつけた。


 グシャっと言う音がして頭は潰せたけど潰れたまま頭より下はバタバタ動いていた。別の大きな石を持ってきてバタバタしている体に叩きつけると、動かなくなった。


 そこら辺に落ちてた木の枝でツンツン突いても反応がない。恐る恐る近づき頭を潰している石を持ち上げると見るも無残な、グチャグチャに潰れたヨコズナデビルの頭があった。


 ふぅ、なんとか倒せたみたいだ。疲れたぁー。怖かったぁー。その場に座り込み大きく息をついた。

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