第155話 私は

 そして2年が過ぎた。


 しあわせ。

 しあわせ。

 とてもしあわせ。


 パパは優しい

 ママも優しい。


 私はしあわせ。

 とてもしあわせ。


「ママー」


 お姉ちゃんは、ママのもとに走った。

 ここは公園。

 お姉ちゃんとママとパパが暮らすマンションの公園。


「理香、上手に走れたわね」


 ママが、そう言って姉の体を抱きしめる。


「うん!」


 お姉ちゃんがうなずくとママが優しく私の頭を撫でた。

 お姉ちゃんは、ただ……

 ただそれだけでしあわせだった。


「今日はね、パパ。

 早く帰ってくるんだよ?」


「ホントに?」


「うん!

 お仕事早く終わるんだって!

 帰りにケーキを買ってきてくれるんだよ」


「ケーキ?

 あまくてふわふっわのやつ?」


「うん!

 そうだよ!」


 それを聞くと自然と笑みがこぼれた。

 姉はケーキが大好き。

 だけど、不安なこともある。


「私の分もある?」


「当たり前じゃない!」


 ママは、そう言ってお姉ちゃんに頬ずりした。

 でも、ママ。

 お姉ちゃん知っていたんだよ。

 お姉ちゃんが寝ているときにこっそりと美味しそうなものをパパとふたりで食べていること……


 ママの体があたたかい。


 お姉ちゃんが笑うとママも笑う。


 ママは、姉を地面に降ろすと、私と手を繋いでマンションの中へと戻った。

 部屋に戻ると私は、靴を脱ぎテレビの電源をつける。


「理香、先におててを洗おうか?」


「うん!」


 姉は、ママと一緒に洗面所に行き、手を洗った。

 そして、その後大好きなアニメ、アンパンマンを見た。

 ママは、ごはんの用意をしている。

 私は、ワクワクしながらアンパンマンを見た。


 楽しい。

 楽しい。

 楽しい。


 いい匂いがする。

 姉が大好きなクリームシチューの匂いだ。

 クリームシチューは美味しい。

 熱いけど、美味しい。

 ケーキの次に好きな食べ物。

 それがシチュー!

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