第19話
その後、益田さんと話していると驚くべきことがわかった。
彼女と、東京嫌いの彼女、赤崎さんは知り合い同士。
それどころか、一緒の学校出身であるということが分かった。
会話の流れとしては、どこら辺に住んでいる? から近くに東京嫌いの人がいるというものであった。
「それで、昔赤崎さんは東京で何かあったのですか?」
「そうね。それはあまり私の口から言いたくないかも知れない」
その口調からは、やはり過去に何かあったのだろう。気になる。
星はキラキラと輝いている。
私が来た時よりも少し西側に傾いている。当然だが、明日の朝にはあの星は見えなくなるだろう。そうしたら、あの星は一体どんな名前だったのか気になっていたことを忘れるだろう。
「赤崎さんは何も悪くないわ」
益田さんは特に理由など語らずそう言った。何も情報がないのでどちらが悪いのか判断することなど出来ない。
時刻は23時。いつもならこの時間にはグッスリと眠っている。欠伸を出して眠気に襲われるはずなのに、今日は不思議と眠気が襲ってこない。
ザザー。波の音が静かになる。
ピューッと吹く風が肌寒い。
だけど、既にその感触たちは夢の中の世界と区別が出来なくなっている。
「車に戻ろっか」
そう提案をしたのは益田さんであった。
そして彼女はスタスタと車の方へ向かう。
私はそれに対して、何も反応しない。
しばらくの間、暗い海を眺めていた。
ザザー、ザザー。ザ、ザ、ザザー。
途中波のリズムがおかしくなる。その音でハッと我に帰った。
取り敢えず今日は帰るかと。
そして私は、益田さんが待っている車の方へ向かう。
彼女は既に車のエンジンを入れていた。
「それで、赤崎さんは昔何があったのですか?」
その質問の回答が得られるのは、今夜大量の流れ星が落ちてきて、そいつらが私の願いを叶えてくれるぐらいに可能性が低いということは分かっていた。
「うーん。何だろうね。その事件に対しても東京とか関係ないの。ただね。彼女の親戚に東京の人がいて」
遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえる。
「うわっ。ここら辺この時間危ないからもう帰ろうか」
話を逸らされた。
車に乗り込み、まるでそのパトカーから逃げるように車を発進させた。
「まぁ、赤崎さんと仲良くしてあげて」
それ以降、私たちは赤崎さんの話をすることなどなかった。
車内で一体どんな話をしたのかは覚えていない。
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